研究課題/領域番号 |
19K03872
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
國廣 悌二 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (20153314)
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研究分担者 |
吉田 賢市 京都大学, 理学研究科, 助教 (00567547)
菊池 勇太 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 理研BNLセンター研究員 (90838799) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | くりこみ群法 / 因果律を満たす流体方程式 / メゾスコピックダイナミクスの導出 |
研究実績の概要 |
本研究の大きな目的の一つは、くりこみ群に基づく密度汎関数理論(FRG-DFT)を発展させ「ハミルトニアンから出発した実践的な密度汎関数理論の確立」を目指すことであり、もう一つは、 第一原理計算に基づき流体方程式などの非平衡非線型ダイナミクスの導出を目指すことであった。 後者においては、申請者が寄与した力学系の縮約法である「くりこみ群法」を発展させFRG-DFTと等号した理論を展開していくことが展望されていた。本年度はこの第二の課題について大きな成果が得られた。すなわち、くり込み群法を基礎とする非平衡ダイナミクスへの展開を発展、体系化し、分担者の日橡であった菊池勇太ともう一人の共同研究者とSpringerより、500頁におよぶモノグラフを上梓することができた。そこでは、くりこみ群法の幾何学的な定式化を基に、その拡張である二重項形式(doublet scheme)の透明で詳細な一般論が展開されている。これは、ゼロモードだけではなく適切な励起モードを力学系の不変多様体の座標として選び出し、その縮約された実効的な発展方程式を与える一般形式である。それは巨視的なダイナミクスから中間的ダイナミクス(mesoscopic dynamics)を縮約ダイナミクスとして取り出す手法でもある。この二重項形式の重要な応用として、ボルツマン方程式から因果律を満たす、いわゆる2次の流体方程式の導出を行っている。この理論は方程式だけでなく、輸送係数と緩和時間、緩和距離に対する微視的な表式を明示的に与える理論である。ものグラフではこれらの精確で速い数値計算法も提示するとともに、凡例計算も行っている。2次の流体方程式はmesoscopic dynamicsを記述する方程式であり、その量子多体系の例として、冷却フェルミオン原子の輸送係数と緩和時間の詳細な計算も示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
汎関数くりこみ群(FRG)法については、超流動系に対する微視的な(自由)エネルギー汎関数を構築することは行われたが、その具体例への適用はできていない。 また、FRG法と非平衡ダイナミクスの縮約理論であるくりこみ群法を統合し、ハミルトニアンから出発する微視的な汎関数非平衡統計理論の構築を研究の最終目的の一つに掲げていたが、その課題に具体的に取り組むことができていない。それは、ここ1,2年コロナの影響もあり共同研究者と集まって具体的に議論できていないことも、動機付けを含めて、原因かもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
汎関数くりこみ群(FRG)法に関しては、共同研究者の対面での議論を早急に組織し、超流動系の汎関数くりこみ群理論を具体例に適用するとともに、既存の近似法との比較を行う。 また、FRG法と力学系の縮約理論の統合理論としての微視的非平衡汎関数くりこみ群理論構築の試みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナのため、予定されていた国内外の出張が取りやめになったため。コロナの収束を期待して、予定された国内外の出張を行い、研究交流と成果発表を行う。その他必要な図書等の物品購入に充てる。
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