研究課題/領域番号 |
19K03872
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
國廣 悌二 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (20153314)
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研究分担者 |
吉田 賢市 京都大学, 理学研究科, 助教 (00567547)
菊池 勇太 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 理研BNLセンター研究員 (90838799) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 重イオン衝突での2軽粒子生成 / 高温・高密度での量子色力学臨界点 / カラー超伝導 / ソフトモード / クォーク物質の電気伝導率 / 汎関数くりこみ群 |
研究実績の概要 |
汎関数くりこみ群による量子多体系の密度汎関数理論の課題の適用範囲の拡大を目指して、「強い相互作用」の基礎理論である量子色力学に基づく有限温度・密度における2種の典型的相転移における集団的ソフトモードの2電子生成率や輸送係数の計算を摂動的ダイアグラムの方法で探究した。まず、(1) Nambu-Jona-Lasinioモデルを用いて、QCD臨界点(QCD-CP)で質量がゼロになるソフトモードが、光子の自己エネルギーの補正を通じてQCD-CP周辺の2電子生成率(DPR)と電気伝導率の増強を引き起こすかどうかを調べた。光子自己エネルギーの補正は、金属超伝導の前駆的伝導率の増大(パラ伝導率)の研究で確立しているアズラマゾフ-ラーキン、牧-トンプソン、および状態密度項を考慮することにより取り入れられた。類似の寄与は以前、カラー超伝導相転移(2SC-PT)近くのDPRの我々の研究において考慮されたものである。光子とソフトモードの結合が、低不変質量領域のDPRとCP近くの導電率の増強をもたらすことを示した。論文はPTEPに掲載された。(2) 上記の補正された光子自己エネルギーを用いてQCD-CPおよび2SC-PTへの相転移が電気伝導率およびそれに関連する緩和時間にどのように影響を与えるかを探究した。そこでは、ダイアグラムの解析的な性質の詳細な分析に基づき、両方の相転移における共通点と異なる側面に重点を置きながら、系がQCD-CPおよび2SC-PTに接近する際にソフトモードがどのように光子の自己エネルギーに影響を与えるかについて包括的な説明を行った。輸送係数が両方相転移の場合に異常な増大を示すことを示すとともに、それらの臨界指数を個別の転移ごとに解析的に計算することに成功した。現在、論文投稿の最終段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、汎関数くりこみ群を汎関数密度関数理論の基礎付けを行う基礎的定式化は、有限温度での無限系において常流動系だけでなく超流動系にも適用できる形で達成されている。今後の課題は、有限系をはじめ物理的に興味ある具体形において得られた定式化を展開していくことである。現在取り扱っている問題は、得られた汎関数密度関数理論の定式化に基づく超流動系における準粒子RPAを超える理論の導出であるが、コロナ禍の影響の後、共同研究者の連携が必ずしも順調ではなく、定式化の途中で止まっている。そこで、もう一つの具体的な課題として、有限温度・高密度での量子色力学における2種の2次相転移点付近の前駆的ソフトモードダイナミクスを取り上げ、現在そのダイアグラムを用いた摂動的理論解析がほぼ終わっている。今後、その成果を基礎にして汎関数くりこみ群法による非摂動的な取り扱いの定式化と数値解析に進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、2次の相転移に付随する集団運動のソフトモード場を取り入れるように汎関数くりこみ群理論の定式化を目指す。そのため、異なる研究機関に所属する共同研究者との討論をより親密に行う。それと並行して、どのような物理現象があり得るかを明らかにするため、摂動的なダイアグラムを用いた定式化と数値解析を進めていく。 超流動系についての汎関数密度関数理論に基づく非線形ダイナミクスについては、予備的な段階にとどまっている定式化を完成させ、数値解析することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張が健康当の理由でキャンセルすることになり経費があまった。パソコンが古くなり各種ソフトに対応できなくなったので、新規に購入することにする。
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