研究課題
約7千万年前に形成され、隆起・沈降後1千万年前に現在の状態に安定した土岐花崗岩は、1千万年の間、地球に入射してくる銀河宇宙線が大気中で生成した高エネルギーミューオンの照射を受けて生成された宇宙線生成核種Be-10、Al-26を蓄積している。その宇宙線生成核種の測定は過去1千万年にわたる宇宙線強度変動を直接的に観測する重要な手段である。CERNにて高純度石英板と土岐花崗岩コアのターゲットセットに160GeVミューオンビーム照射を行い、照射試料を加速器質量分析法により分析してBe-10、Al-26の生成量のデータセットを得た。本研究において照射ミューオン数を確定し、ミューオン当たりのBe-10、Al-26生成率のターゲットセットプロファイルをまとめた。さらに、PHITSおよびFLUKAを用いて、実験セットアップに対して詳細なミューオン照射シミュレーションを行った。シミュレーションによる生成率プロファイルは実験結果と同様であり、ミューオンによる直接核破砕生成率と花崗岩中でミューオンにより生成された二次粒子による核破砕生成率が実験値として求められることが分かった。しかし、シミュレーション値は実験値の約30%と小さくシミュレーションにおける各粒子の生成断面積について、さらに検討が必要であることが示唆された。実験値から求めた直接核破砕によるBe-10、Al-26の生成断面積は9.2±0.6、132±8 μb、花崗岩に対して二次粒子による核破砕を含めた生成断面積は20.6±1.1、402±32 μbであった。これらの生成断面積と高エネルギー宇宙線ミューオンの地下深度スペクトルから岩石中のBe-10、Al-26濃度の深度スペクトルを計算し、これまで得られた岩石中のBe-10、Al-26濃度との比較を行った。これらの結果をまとめた論文はPhysical Review Dに掲載された。
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PHYSICAL REVIEW D
巻: 109 ページ: -
10.1103/PhysRevD.109.102005
Journal of Asian Earth Sciences
巻: 265 ページ: 106091~106091
10.1016/j.jseaes.2024.106091