本年度は前年度までにできていなかった質量・速度分離測定の手法を実証するための実験データの取得を行った。この手法は、複数枚のシリコン半導体検出器などを利用した荷電粒子の原子番号・質量数を測定するためのΔE×E法から着想したものであり、衝突体であるダスト粒子の部分的な運動量(一枚目で測定できた運動量、Δp)とトータルな運動量pからその質量と速度を分離する方法で、Δp×p法と名付けた。前年度までに先行研究による経験式に基づく、複数のフィルムによる運動量測定から質量・速度分離を行う理論式をまとめた。このΔp×p法を実証するために、JAXAの超高速衝突施設の二段式軽ガス銃を使った実験を昨年度に引き続き行った。 本研究の当初の目的は宇宙ダストを模したφ10μmのガラスビーズを模擬ダスト粒子として、実験の便宜上、確実なショットができるφ300μm以上の微粒子を模擬ダスト粒子として使った。この方法で模擬ダスト粒子条件、つまり、粒径(300μm~500μm)、材質(ガラス球、アルミナ、ステンレス)、衝突速度(3~5km/s)と条件を変えてデータを取得した。ただし、この衝突条件では上記衝突体が1枚目のフィルムだけでなく、2枚目以降も貫通してしまう。このため、センサーフィルムの間隔を10cm程度にしてWhippleバンパーの原理で2枚目以降の衝突体の貫通力を抑えた。 JAXA衝突銃で3回のマシンタイムを確保し(計9日間)、全45回のショットで37ショットで有効なデータを取得できた。実験の概要についてはJAXAの令和4年度 宇宙科学に関する室内実験シンポジウムで報告した。現在さらに実験データの解析を進めながら論文執筆の準備を進めている。
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