研究課題/領域番号 |
19K03896
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
端山 和大 福岡大学, 理学部, 准教授 (70570646)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重力波 / KAGRA / 望遠鏡診断 / データクオリティ |
研究実績の概要 |
2019年度は、リアルタイムでの重力波探査を実現するために、外部環境の擾乱がどう望遠鏡運転に影響し、それに伴って観測データの質にどのような影響を与えるのかを定量的に、リアルタイムで評価する体制を確立する計画であった。当年度は、本計画を立てた時点では未確定であったKAGRAのテストランが2度、サイエンスランが1度行われた関係で、外部環境の擾乱実験をKAGRA本体で行うことは延期し、望遠鏡の運転状態による観測データの質を定量的に評価し、重力波探査に反映する手法の確立に成功した。望遠鏡の状態変化の中で、特に重力波探査に影響する、干渉計ロック情報、アウトプットモードクリーナ、ミラー制御信号、防振系制御信号などの情報を用いて定量的に評価する方法を確立した。そして望遠鏡の観測状態を4つのカテゴリーに分類し、重力波探査を効率的に行い、より短時間で探査を行える体制を構築した。
また、擾乱実験の方は福岡大学でテーブルトップサイズの干渉計を構築し、地震動、音響雑音を与えることで、干渉計の伝達関数がどのように変動するかについての基礎実験を行った。実験室内の温度、湿度、気圧をモニタする、環境モニタをラズベリーパイを用いて開発。これはKAGRAのアームといった環境が厳しい場所での環境をモニタする際に必要になる安価で湿度に強い環境モニタを作成する第一歩となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KAGRA本体を用いた擾乱実験は行わなかったが、実験室で干渉計の擾乱実験を行うことで手法の確立、習得を行ったことで、準備を整えることができた。また、データクオリティの評価システムの構築は当初2年目に行う計画であった。ゆえに総じて順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、COVID19の影響を考慮しながら、計画をある程度柔軟に変更する必要が出てきた。COVID19の収束の時期が遅れる場合、本研究計画の中の実験、特にKAGRAに訪問して行う実験は後回しにする。その場合は、望遠鏡の状態を知るための環境モニタや環境擾乱の研究は現状の知見を用いることにして、本研究の他の目標である、望遠鏡の各装置から取得された信号の情報から、リアルタイムで観測データの質を評価し、重力波探査に用いるシステムのさらなる確立を進める。現段階では、望遠鏡状態を知るための装置からの信号チャンネルは全く十分でない。そこで、その数を最適なものにする必要がある。そのために、得られるデータクオリティと重力波探査の効率とを詳細に調べ、評価するチャンネルの数を最適なものにする。また、装置からの信号を解析する手法の成熟も行っていく。現段階では、評価するための解析ソフトは整いつつあるが、まだパラメタの調整が不十分である。今後はその調整する手法の確立も行っていく必要がある。また、既に開始している、LIGO,Virgoとの共同観測では、各プロジェクトでデータクオリティの評価基準のコンシステンシーをそろえる必要がある。KAGRAの状態把握のためのパラメタ調整はとプロジェクト間での評価基準の2つを融合させる研究も進めていく。特に、KAGRAにしかない、低温防振装置に由来するデータクオリティ評価をどう生かしていくのかは大切である。世界の情勢にもよるが、今後LIGO-Virgo-KAGRAによる共同観測が実現されれば、その観測データに対してデータクオリティ評価を含んだ重力波探査を積極的に進めていく。COVID19が早期に収束することになれば、上記研究とともにKAGRA本体を用いた、地震動を中心とした擾乱実験を行い、雑音源を特定する方法を確立していくことが加わる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、KAGRAがテスト観測2回、サイエンス観測1回と、観測の実行を中心とする方向に研究が進んだ。そのため、本研究計画の1つである、データクオリティの評価システムの構築の重要性が高まり、本年度はその構築を行った。そのため、KAGRA本体を使った基礎的な環境擾乱実験は次年度に回す判断をしたため、次年度使用額が生じた。2020年度では、2019年度に購入予定だった実験装置を購入して、擾乱実験を行う計画である。
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