研究課題/領域番号 |
19K03900
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
古田 久敬 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (50467023)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 紫外LED / 液体シンチレータ / キャリブレーションシステム / 2次発光 / ステライルニュートリノ |
研究実績の概要 |
電荷非線形性は、PMTゲインにも依存しているため、実験中のPMTゲインの変動の可能性を考慮すると、in-situでPMT非線形性を測定できるシステム(PMT_NLS)の開発が不可欠である。このPMT_NLSは、電荷量期待値(PMTへの立体角)を知る必要があるため、検出器内の設置位置が既知の状態で大きな光量を出せる点光源のシステムである必要がある。低予算で実現可能で且つ取り回しが非常に簡単であることを考慮して、紫外LEDを液体シンチレータ内で2次発光させるシステムを開発する。 LEDシステムの詳細としては、紫外LEDの光を光ファイバーを用いて液体シンチレータに送り込み、液体シンチレータを2次発光させて等方的に光らせるものである。またファイバーの先端位置を、ステッピングモータを使って実装予定のJSNS2実験検出器内中心軸z方向に自由に位置決めできるすステムである。 本年度でまずバイアルに入れた液体シンチレータとPMTを用いて、実際に紫外LEDとファンクション・ジェネレータを使って発光波形を模擬できるかを確認する。同時にシステムに使用する材料の選定のため、液体シンチレータに対する耐性試験を行い、最終的に年度内にシステムを完成させる計画であった。 信号波形の再現性、紫外LEDの波長の選定等いくつか細かい課題が残っており、引き続きスタディを継続する予定であるが、ステッピングモータを用いた紫外LED2次発光システム全体としてはほぼ完成しており、概ね計画通り研究が進んでいる。 JSNS2実験検出器本体の建設も昨年度末に既に完了しているため、次年度に予定しているJSNS2実験検出器への本LEDシステムの実装及び本測定も予定通り行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度でまずバイアルに入れた液体シンチレータとPMTを用いて、実際に紫外LEDとファンクション・ジェネレータを使って発光波形を模擬できるかを確認する。同時にシステムに使用する材料の選定のため、液体シンチレータに対する耐性試験を行い、最終的に初年度内にシステムを完成させる計画であった。 LEDシステムの詳細としては、紫外LEDの光を光ファイバーを用いて液体シンチレータに送り込み、液体シンチレータを2次発光させて等方的に光らせるものである。またファイバーの先端位置を、ステッピングモータを使って実装予定のJSNS2実験検出器内中心軸z方向に自由に位置決めできるすステムである。 まずシステムに使う材料(光ファイバー)の液体シンチレータに対する耐性を見る必要があったため、候補材料を一定期間浸した液体シンチレータサンプルを用意し、分光計による透過率測定を行い、経年変化に問題が無いことを確認した。 次に紫外LEDの光をファイバーを用いて液体シンチレータバイアルに送り、バイアル外に設置したPMTで紫外光がシンチレータ内で2次発光した光を確認した。具体的には、球形のバイアル(フラスコ型)を用意し、いくつかPMTの光電面の角度を変えて測定し、概ねどの角度でも誤差内で同量の光量を確認できた。しかし、ファイバーの真下方向に関しては光量が僅かに多かった。これは2次発光しないそのままの光の混入によるものと結論付けられるため、さらに短波長側のLEDを選定する必要があり今後の課題である。また波形に関しても特に数ナノ秒という液体シンチレーションの立ち上がりを再現することが現在まだ課題として残っている。 最終的にステッピングモータを使ったリール式のファイバー巻取りシステムの試作機も作成し動作確認を行い、LEDシステム全体としてはほぼ完成した。そのためいくつかの細かい課題は残ったものの、概ね計画通り進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目は、本LEDシステムを実際にJSNS2実験用検出器に実装し、実機を使った電荷非線形性の測定を行う。測定結果を使って電荷非線形性により歪んだ波形から理想的な波形を再構成するアルゴリズムを開発する。その出力波形を使ったエネルギー及び事象位置再考性アルゴリズムの開発も行う。同時に波形弁別能力を最大限引き出すためのPSD用変数の構築を目指す。 昨年度末にようやくJSNS2実験用検出器の建設が終了し、本年度中に液体シンチレータの液入れを予定している。そのため、シンチレータ充填後本LEDシステムの実装及び測定が可能となる。それまでに上述した課題を克服する予定である。数ヶ月以内にシステムを用いた測定を実施し、その後データ解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用させて頂いた。この数字は端数として残ったものである。
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