研究課題/領域番号 |
19K03903
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永井 泰樹 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (80028240)
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研究分担者 |
塚田 和明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主席 (30343916)
橋本 慎太郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (60465995)
橋本 和幸 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 専門業務員 (80414530)
須郷 由美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員 (90354836)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 加速器中性子 / テクネチウム99m / 核医学診断 / 銅67 / 無侵襲治療 / 熱分離 / 放射性医薬品 / 国産化 |
研究実績の概要 |
放射性医薬品を用いた内用療法には、原子炉の熱中性子や加速器の陽子を用い製造されたRIが利用されている。そして最新医療では個々の患者のゲノム情報に基づく個別化医療推進が喫緊の課題である。この課題解決に向け多様なRIの製造法開発が進行している。我が国では、三大生活習慣病に関わる核医学診断が、海外原子炉製の99Moを輸入しその娘核99mTcに標識された医薬品を用いて日々3000人を対象に行われている。そのため99Moの安定供給は不可欠であるが、99Mo供給体制は原子炉の高経年化による計画外停止のため不安定である。我々は国産化による99Moの安定供給を目指し加速器中性子を用いた新製造法を提案し、既存の加速器を用い99Mo生成と99mTcの熱分離・精製の研究開発を行ってきた。この方法で得られた99mTc医薬品は放射性医薬品に関わる薬事法を満たし99Moの国産化に目途をつけた。またがん治療・診断用67Cuは、患者のがん病巣部への薬剤集積をその場で診断しながら治療ができる画期的なRIとして期待されている。しかし、その大量製造法の確立が課題であった。我々は加速器中性子を利用しその多量製造と高核種純度の67CuのZn試料からの分離精製法の開発を進めてきた。現在までに50gのZn試料から多量の67Cuを迅速に分離精製する方法を完成させ、その高純度化・比放射能向上に成功している。更に治療用RIとして注目を集めている177Luの実用化に向けた研究開発も順調に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 我々は、加速器中性子を用いて99Mo、67Cu、64Cuを製造するわが国独自の製造法を提案し実用化に向けた研究開発を成功裏に行ってきた。また、ホルモン等を分泌する神経内分泌細胞由来の神経内分泌腫瘍は全身の様々な臓器(膵臓・胃・肺・乳腺・大腸・小腸・前立腺・下垂体など)に発生し有効な治療法の開発が切望されていた177Lu放射性同位体の加速器製造の可能性を調べた。その結果、高い核種純度の177Luが多量に製造できることを明らかにした。また令和2年度には既存の加速器に高強度の重水素イオン源を設置し、これまでの20倍の中性子束を得る新たな計画が開始された。これらの計画を含め何れも順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
治療用のRI医薬品を静脈から注射し体内からがん細胞を致死する強度のRIを集中して照射するためには高品質・高強度のRI製造が不可欠である。このような強度のRI を製造するには高強度で中性子エネルギーが平均14~19MeVの加速器中性子が必要である。我々は、東北大学サイク ロトロン・ラジオアイソトープセンターで稼働中のサイクロトロン加速器を整備して重陽子ビーム強度を現状の20倍にする計画を進めている。これまでのところ計画は順調に進み既に負電荷の重陽子加速に成功しこれを用いて加速器中性子を生成した。今後更に重陽子ビームの高強度をはかり高品質の99mTc・67Cu・64Cuを得るための分離・精製法の 研究開発をより強力に推進する。また国産化に向け精製したRIを創薬・核医学の研究者に提供し、国産のRI医薬品開発に貢献する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額はほぼ当初計画通りである。
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