研究課題/領域番号 |
19K03914
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大塚 雅昭 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (70399286)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 惑星状星雲 / 恒星風 / 星周物質 / 元素組成 / 面分光観測 / 多波長 |
研究実績の概要 |
本研究は中小質量星の進化末期段階にある惑星状星雲 (PN)の紫外-遠赤外線三次元分光データを使い、中心星付近から星間物質にまで広がる星周殻内の原子/分子ガス・ダストの完全な三次元物理量分布調査から中小質量星における恒星風質量放出の定量的解明を目指すものである。2019年度における研究成果は以下の通りである。
紫外-可視データの新規取得:本研究を申請した2018年11月時点では4天体が未収集であったが、京大3.8-mせいめい望遠鏡と米国8.1-mジェミニ望遠鏡の共同利用観測時間をとおして6天体の紫外-可視三次元分光データの獲得に成功することができた。炭素/窒素/酸素の空間数密度分布は親星の初期質量との間に強い相関がある。よって、恒星風質量放出の定量的理解のためには、これら3元素の空間数密度分布の調査が必要不可欠である。取得済みの三次元分光データと紫外域においてのみ検出可能なC IV/N III/O III輝線イメージを組み合わせて明らかにするべく、印度X線-紫外線観測衛星Astrosatでの観測も新たに開始した。
学会発表/論文出版:日本天文学会年会において、せいめい望遠鏡データに基づく研究成果報告をおこなった。秋季学会では、PN Hu1-2における7元素組成の非一様空間分布と赤道トーラス面動径方向にそったフローの発見、春季年会では、PN IC2165における100本以上の2-D輝線マップによる12元素組成の非一様空間分布を報告した。ともに本研究独自の成果である。本研究と関連して、紫外-中間赤外分光データでPN J900を調査、17元素組成比の観測値と理論進化モデルの比較から、中性子捕獲元素量過多を説明するために必要な13Cポケット質量に制限を与えることができた。成果はOtsuka & Hyung (2020, MNRAS, 491, 2959)として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由1:本研究は、地上望遠鏡で取得したデータと各種天文衛星で取得した紫外-遠赤外データとを組み合わせる必要がある。そのためには、点拡がり関数除去までを考慮した輝線像合成プロセスの確立と必要なパラメータサーチが必須である。それが2020年3月時点で未完成であったため。しかし、まもなく完成する見込みである。せいめい望遠鏡データによる輝線像合成テストで良好な結果が得られることを確認済みである。
理由2:クラスターコンピュータで観測された物理量の空間分布を包括的に再現する、三次元光電離モデルの準備が遅れたため。これは、コロナウイルスの世界的蔓延のために、コンピュータ部品の調達困難とも関係している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はサンプル天体の面分光データの解析を終え、(1) 三次元質量分布と運動学的構造の調査と(2) 元素組成の三次元分布の調査を行う。2020年12月から翌年8月まで米国デンバー大植田氏が学振外国人招へいプログラムを利用して京大に滞在する(受け入れ責任:大塚)。植田氏と直接議論することで課題(1、2)の調査に必要な科学的解析を効率的かつ迅速に行うことができ、成果発表と出版をさらに加速させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
クラスターコンピュータの購入を予定していたが、コロナウイルスの世界的蔓延のために、コンピュータ部品の調達が困難となり2019年度中に購入できなかった。機種の選定を速やかに行い、購入手続きを進める予定。
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