研究課題/領域番号 |
19K03916
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
町田 真美 国立天文台, 科学研究部, 准教授 (50455200)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MHD / 渦状銀河 / 磁気乱流 / 電波擬似観測 |
研究実績の概要 |
渦状銀河の磁場情報は、シンクロトロン放射を起源とする電波連続波の偏光観測によって得る事ができる。放射強度から非熱的電子と磁場の積の積分値を、波長の二乗に対する偏波強度の傾き(ファラデー回転量度)から偏波の発生源の観測量である放射は、発生源から観測点までの間の全ての情報の積分値であるため、実際にどの領域から放射が生じたのか、放射源は何個あるのかなどの情報は判断できない。近年、視線方向上に積分されたファラデートモグラフィーによって、ファラデーデプス空間上に成分を分離する手法が利用されはじめているが、実際の視線方向上の空間分布に直すためには、さらにもう一段の仮定が必要となっている。そこで、銀河ガス円盤の3次元磁気流体数値実験によって得られた物理量分布をもとに放射量を計算し、実際の観測と比較することで、ファラデーデプス分布と積分された放射量の関係を明らかにすることを目指した。 本年度は、特にファラデー偏波解消の項かに着目した研究を進めている。先行研究であるMachida et al. (2018, 2019)では、空間分解能以下の乱流は等方であると仮定していた。しかし、数値計算によって得られた磁場構造は、大局的な成分と乱流が混在する系であるため、計算セル以下の磁場構造も非等方乱流であると考えられる。そこで、非等方乱流の場合の波長非依存型偏波解消を取り入れた擬似観測コードの解析を行った。その結果、磁場の大局成分の存在故に、偏波解消効果は弱まることが示され、乱流の非等方性は無視できないことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀河磁場のメートル波、センチ波観測で重要となる偏波解消効果として、波長非依存型偏波解消、内部偏波解消、外部偏波解消、ビーム偏波解消を取り入れた擬似観測を行う事ができるようになった。特に、波長非依存型偏波解消は、非等方乱流の場合の取り扱いを含める事ができるようになり、より現実的な擬似観測量の導出が可能となっている。また、内部偏波解消の理解も進んでいる。 これまでの解析では、Machida et al. (2013)による銀河円盤の磁気流体数値計算を用いてきた。この計算は、断熱を仮定していたためガス密度に不定性が残っていた。そこで、より現実的な擬似観測を行うために、冷却効果を取り入れた数値計算を行うための準備をした。冷却項を陰的に計算コードに組み込みテスト計算を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度前半は、昨年度作成した冷却入りの数値計算コードのテスト計算を行い、冷却を考慮した銀河ガス円盤の数値計算コードの整備を進める。出来上がり次第、本計算を行う。冷却入りの銀河ガス円盤の計算結果から、銀河磁場の増幅が断熱の場合とどの程度異なるか、ハロー密度、銀河円盤内の高密度領域の分布などを調べる。更に、前年度に作成した擬似観測コードを用いて、観測的可視化を行い、実際の観測と比較し、観測結果から3次元磁場構造を導出するモデルの作成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では、オランダ、及び南アフリカで開催される国際研究集会に参加予定であったが、コロナ感染対策のため、研究会が延期・オンライン開催になったため、旅費を支出しなかった。そのため、当初確保していた旅費相当分が未使用となった。 本年度も海外出張の目途は立っていない。国内出張が可能になった際には、国内研究会(日本天文学会2022年春年会)や、研究打ち合わせ(福岡)などに10万円程度支出する。物品費としてノートPC及びデータ保存用のハードディスクの購入を予定している。その他雑費として、論文出版費、九州大学計算センター計算機利用代金を支出する。
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