渦状銀河は、恒星が作る渦状腕に概ね沿った渦状磁場構造を持つ。銀河磁場は、平均数マイクロガウス程度の大局磁場成分とそれよりも強い乱流磁場の重ね合わせで説明できると考えられている。近年、センチ波の多周波数の偏波強度をフーリエ変換することで視線方向に積分された磁場情報を分離するファラデートモグラフィーの研究が盛んになっている。我々は渦状銀河の3次元磁気流体シミュレーションデータを用いた擬似観測を行ってきた。その結果、2次元の天球面上に射影された渦状磁場構造は、密度渦状腕にほぼ沿った構造として観測されるが、3次元的に放射領域を特定していくと、実際には一続きの大きな渦状構造ではなく、視線の異なる位置にあったものの重なり合わせであることがわかった。また、偏波解消が生じる周波数と放射領域の赤道面からの高さの間に相関があることを示した。特に、渦状磁場構造のスケール長が1kpcよりも長い渦状腕の場合の高さとの相関が良い。逆に偏波放射強度としては数kpc以上連続しているけれども、ファラデー深度分布の反転や、偏波解消が有効になる周波数が一定ではない渦状構造は、赤道面付近の構造を反映している場合が多い事がわかった。これらの結果から、密度渦状構造と磁気渦状構造には生成起源に相関はある可能性があるが、放射領域には乖離があることがわかった。 これらの計算は、銀河ガス円盤の差動回転中で生じる磁気回転不安定性によって増幅が銀河磁場の起源であるとしたモデルである。そこで、恒星の運動を正しく追った銀河円盤に対して、ポストプロセスとして誘導方程式を解いて磁場を推定した結果に関しても、同様の擬似観測を行った。その結果、恒星の作る渦状腕とは異なる磁場分布になる事がわかった。
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