今後の研究の推進方策 |
マゼラン望遠鏡での観測が開始するまでは、過去にWINEREDで取得されたデータの解析を中心に進める。2018年にA型星の観測とそこから得られたラインリストをまとめた論文を執筆した(Sameshima et al., 2018, ApJS, 239, 19)が、同様の手法で他のスペクトル型の恒星や輝線天体の解析を行う。具体的には、過去にWINEREDでクオリティの高いスペクトルを取得しているOB型星の解析を進める。最近の研究から、高分散で観測するとOB型星のスペクトルには線幅の細い輝線が見られることが新たに分かってきており(例えば Sadakane et al., 2017, PASJ, 69, 48)、WINEREDスペクトルでもそのような輝線が見られるか検証を行う。輝線が見られる場合はどの元素によるものか同定作業を行うが、吸収線と異なり輝線は放射ガスの運動により波長が変化する上、放射機構が複雑でスペクトルのシミュレーションが恒星大気ほどの精度は達成できていない。そこで他の輝線天体の観測スペクトルとの比較が重要になる。代表的な輝線天体である共生星は輝線リスト作成に適した天体の一つと言え、過去にWINEREDで複数の共生星について高クオリティのスペクトルを取得している。そこで共生星の解析に取り組み、輝線の同定とラインリスト作成を行い、またOB型星スペクトルとの比較検証を行う。 コロナウィルスによる混乱が落ち着けば、2020年後半にはマゼラン望遠鏡での観測を行う予定である。マゼラン望遠鏡でのWINEREDの観測夜数は決まっており、それを関係研究者で分ける形になっているため、検討会を行うなどして観測夜数を決定し、それに基づいて観測候補天体の選別を行う。なおマゼラン望遠鏡での観測は、実際に現地に赴いて観測を主導する予定である。
|