研究課題
近年の高精度観測装置によって、銀河中心には太陽質量の100万倍から10億倍もの超巨大ブラックホール(SMBH)が普遍的に存在し、その質量は銀河バルジの質量に比例することが明らかになってきた。しかしながら、その形成メカニズムは未だ謎に包まれており、天文学における最重要テーマの1つである。この問題を解決するために、銀河からのガス供給により形成される数10パーセクの銀河核ガス円盤(CND)を介して、銀河からブラックホールまで6桁ものダイナミックスレンジに渡るガス降着過程と、ブラックホール近傍からの輻射やWindによるフィードバック効果を整合的に考慮した理論モデル「多階層連結モデル」の構築が必要である。近年、多階層連結モデル構築へ向けた第一歩として、CNDでの超新星爆発による乱流粘性によって駆動されるガス降着モデルに活動銀河核(AGN)からの非等方放射がトーラス構造に与える効果を考慮し、CNDの構造がどのような物理量に依存するか調べた(Kawakatu, Wada & Ichikawa 2020)。結果として、パーセクから10パーセクの構造は、SMBHの質量、Eddington光度比と星形成光度で決まることが明らかになった。一方で、サブパーセク領域に注目すると、AGNから輻射によりWindが吹き、低光度AGNのときのみ、極方向へガスが巻き上げられることが分かった。このことは、Windがサブパーセクスケールでの遮蔽だけでなく、ジェット収束にも寄与する可能性があることを示唆するものである(Kawakatu et al. 投稿準備中)。
2: おおむね順調に進展している
ジェットとWindとの相互作用に関する理論モデルの構築、および関連する観測研究が順調に進んでいるため。
活動銀河核(AGN)に付随する相対論的ジェットの形成・進化、およびジェットが周辺ガスへ与えるフィードバック過程を理解するために、近傍電波銀河3C84に焦点を当てて、理論モデルと観測との詳細観測を行う。
(理由)新型コロナウィルス感染予防のため、参加予定の国内外の研究会が中止もしくはオンライン開催となったため。(使用計画)新型コロナウィルスが収束した場合には、今年度の成果報告等の旅費に使用する。
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The Astrophysical Journal
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