研究課題
星間磁場がどのように分布しているかを知るためにいくつかの方法がある。視線方向の強度はゼーマン分裂により計られるが、天球面上の磁力線形状は磁場に整列したダストからの熱放射やダストによる背景星の吸収の偏光面により測定される。近年、このダストの磁場への整列に関しては、不完全と考えられる原始惑星系円盤などの例が知られるようになった。この課題では、ダストの整列を仮定しない天球面上の磁場測定方法であるGoldreich-Kylafis(以下GK)効果の観測予測を行うため、偏光した輻射の輸送を非局所熱平衡の元で計算するプログラムを開発し、3次元的なガスと磁場構造がどのような分子線の偏光を形成するかを数値的に調べる事を目指している。(A)今年度、偏光を調査するモデル天体として、負の指数を持つポリトロープ・フィラメントの形状、安定性を調べる研究を行った。フィラメントは近年、分子雲を構成する星間分子ガスの形状として注目を集めており、今回、圧力平衡の仮定の元、ガスと磁場の構造について調査した。その結果、ダスト熱輻射で観測されているダストの面密度分布を説明するには、およそ-3程度の負のポリトロピック指数が必要であることが分かった。この負指数は、フィラメント中心に向かって、温度もしくは乱流速度が減少していることを意味する。(B)GK効果のシミュレータについては、出口とWatsonによる定式化(1984)が、モンテカルロ法を使った、非局所熱平衡輻射輸送問題にも適用可能であることを、基本式に立ち返って確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
概要に示したように、GK効果の基本的な定式化については終了した。これをモンテカルロ法を用いた非局所熱平衡輻射輸送コードへ組み込む事は、2年目以降とした。
長い特性曲線法に基づく、モンテカルロ法を用いた非局所熱平衡輻射輸送コードは、富阪が開発したコードを用いる(和田と富阪2005)。(A)輻射強度を2つの偏光成分に分けて解くこと、(B)磁場中の分子の磁気量子数に関する遷移を計算すること、これら2つの要素を付け加えることで、偏光を含んだ非局所熱平衡輻射輸送問題を解けるように、書き直す。計算時間を要する重い部分は、輻射の光跡を計算する部分で有り、これは2019年度購入した計算機が役立つ。磁気量子数に関する遷移が2つの偏光成分と結合する部分のプログラム化が2年目の課題になる。
コロナウイルス蔓延に伴って、ほぼすべての国際会議、国内研究会が中止となったため、旅費を中心として使用計画が後ろ倒しされた。第2年度、国際会議、国内研究会が開催されるような状況になればその用途に、そうでなければ、第1年度に購入した計算機にハードディスクを増強するなどの計算機資源充実に使用する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件) 学会発表 (6件)
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