研究課題/領域番号 |
19K03920
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
永井 誠 国立天文台, 先端技術センター, 特任研究員 (50522877)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電波望遠鏡 / 超伝導検出器 / 偏波カメラ / 鏡面測定法 / コプレーナ導波路 / 結合器 |
研究実績の概要 |
今年度は、偏波計ピクセルの遅延回路の電磁界シミュレーションの方法を改良し、遅延回路全体のシミュレーションがより高速に実行できるようにした。これにより、遅延回路の設計を個別のコンポーネントだけでなく全体のシミュレーションに基づいて検討できるようになった。同時に、遅延回路内の180°ハイブリッド結合器についても設計を改良し、入力ポートの反射を大幅に低下させることができた。 また、アンテナの開口能率とアンテナの瞳面でのビーム形状を結びつける論文がアンテナの専門誌に受理された。これは本研究で実現しようとしている偏波計アレイによって測定しようとしている瞳面での位相を含めたビーム形状と、アンテナの重要な特性の1つである開口能率を直接結びつける理論的な結果である。 一方で、コロナ禍の影響により、並行して行っているMKIDカメラの実験の行程が大きく遅れてしまった。このため、本研究に関しても実験室・クリーンルームでの作業の大部分を進めることが叶わなかった。その代わりに、両偏波平面アンテナについて、シミュレーションを開始した。平面アンテナの特性が偏波計ピクセルの偏波特性に最も影響すると考えられるため、十分良好な偏波特性を持つ平面アンテナを、偏波計ピクセルに先立って試作しておく必要があるという結論を得た。 こうした状況のもと、クリーンルームでの作業を本格的に始められた際に、エアーブリッジと平面アンテナという2つの重要なコンポーネントの試作に入れるよう、準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中に、コプレーナ線路に施すエアーブリッジの製造方法をクリーンルームでの試作によって検討する予定であったが、コロナ禍の影響により、この検討の実施には至らなかった。 その代わりに、偏波計の偏波特性に大きく影響すると考えられる両偏波平面アンテナについて検討を進めた。平面アンテナの電磁界シミュレーションを行うことで設計の改良の余地を調べるとともに、平面アンテナ単独の試作の準備を進めた。これにより、クリーンルームでの作業を本格的に始められれば、エアーブリッジと平面アンテナという2つの重要なコンポーネントの試作に入る見通しが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、偏波計ピクセルの試作に向けた準備を、設計・製造・測定の面で進めていく。 設計については、平面アンテナ、遅延回路、MKIDのシミュレーションができるようになったので、これらのコンポーネントを結合したシミュレーションを行い、偏波計ピクセル全体の試作用の設計を完成させる。製造については、今年度行う予定であったエアーブリッジの製造方法の確立を進める。そのうえで、エアーブリッジを施した両偏波平面アンテナを制作し、エアーブリッジによってアンテナの偏波特性が改善するかを確認する。この測定に必要な偏波特性測定用の回転ステージを含めた実験装置を整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、学会発表等の出張が全て無くなったため、この分の支出が無くなった。また、実験で使用する機材の購入も無かったため。 この分の助成金については次年度において、当初の計画よりも両偏波平面アンテナの設計・試作を強化することにしたので、薄膜成形用マスクなど平面アンテナ試作に必要な物品の購入に充てる。
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