研究課題
今年度は、偏波計ピクセルの各構成要素の電磁界シミュレーションを進め、偏波計ピクセル全体の設計に必要な検討を行った。両直線偏波用の平面アンテナについては、従来使用していた電磁界シミュレーションソフトウェア(HFSS)に加え、別のシミュレーションソフトウェア(FEKO)によるアンテナ特性のシミュレーションを開始した。これまでのところ、シミュレーションの基礎となる片直線偏波用の平面アンテナのシミュレーションをFEKOを用いて行い、HFSSを用いて得られていたビーム特性・周波数特性の結果と整合的なシミュレーション結果を得ることができた。偏波計ピクセルの遅延回路については、全体のシミュレーションが可能となったため、引き続きHFSSを用いた解析を進めた。透過特性については期待される値(各出力が-6 dB)に十分近い性能が得られた。反射特性と絶縁特性についても目的とする周波数帯(100 GHz)において良好な特性が得られるようになった。さらに、この遅延回路には導波路の長さを変えて出力される干渉強度の位相差を調整できることが求められるが、3箇所の導波路の長さを独立に変更することで4つの出力の位相差を適切な値(0°、90°、180°、270°)に設定できることが確認できた。また、遅延回路と平面アンテナを繋ぐT字型結合器の設計、遅延回路とMKID検出器を繋ぐハイパスフィルタの設計を行った。T字型結合器については、基本的な構造での周波数特性を調べたが、平面アンテナの偏波特性・ビーム特性と合わせた検討を行う必要がある。ハイパスフィルタについては、良好な特性を持つ設計を得られた。偏波計ピクセルの試作については、野辺山MKIDカメラのコミッショニングの実施、コロナ禍の影響、性能測定用の希釈冷凍機の不調などにより実施することが叶わなかった。この中で、希釈冷凍機のメンテナンスに向けた準備を進めた。
3: やや遅れている
偏波計ピクセルの設計については、当初の想定よりも高いレベルで検討を行うことができ、試作用の設計を策定する準備は整っている。ただ、両偏波用平面アンテナについては、以前の試作で十分な偏波特性がまだ得られていないことから、電磁界シミュレーションによる検討を進めて偏波特性を改善できる設計を追求する余地はある。偏波計ピクセルの試作に向けて、必要なウェハなどは購入済みである。しかし、目標としていたエアーブリッジの製作方法の確立と両偏波用平面アンテナの試作は実施することが叶わなかった。試作後の評価に必要な希釈冷凍機も不調になっており、これのメンテナンス実施のための準備を進めている。
偏波計ピクセルの設計の完成を目指す。また、偏波計ピクセルの試作後の評価に必要な希釈冷凍機のメンテナンスを実施する。偏波計ピクセルの試作に向けたエアーブリッジの製作方法の確立と両偏波用平面アンテナの試作は優先度が高いが、研究協力者の退職や大学院修了により、実施が難しい状況となっている。試作が行えない場合には、偏波計ピクセルの設計に基づいて、損失やクロストークを評価し、電波点回折干渉計として用いた場合の波面の位相の決定精度との関係を調べるシミュレーションに着手する。
偏波計ピクセルの試作後に必要となる評価用のクライオスタットの希釈冷凍機が不調となったため、メンテナンスを行うことになった。当初は当年度内の発注を目指していたが、契約の準備が完了しなかったため、次年度に発注を行うこととした。また、相関型干渉計の読み出し技術の基礎となるMKIDカメラのコミッショニングに参加するための出張に関して、宿泊費の変更や一部の出張日程の3月から4月への変更などにより、出張費の一部を次年度に使用することになった。いずれも、当年度内の使用を予定していたものが次年度へ変更になったものであり、使用する金額は元の計画のとおりである。
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