研究実績の概要 |
本研究では、近赤外線偏光観測の手法により、分子雲コアに付随する湾曲磁場の探査を進めている。本研究に関連して5編の論文を出版した(Kandori et al., 2020, ApJ, 888, 120; Kandori et al., 2020, PASJ, 72, 8; Kandori et al., 2020, ApJ, 890, 14; Kandori et al., 2020, ApJ, 891, 55; Kandori et al., 2020, ApJ, In press)。砂時計型の磁場構造が付随する分子雲コアとしては、これまでFeSt 1-457が知られていたが、それ以外に湾曲磁場が付随する天体を4天体(B68, B335, CB81/L1774, BHR71)発見した。興味深いことに、すべての天体において力学的安定性が臨界状態を示すことがわかった(クリティカルコア)。この結果は、低質量分子雲コアにおける星形成過程の初期状態は平衡に近い状態になっていることを示唆する。クリティカルコアの探査のために大きなサーベイの継続が必要である。FeSt 1-457では、観測と、Myers et al. (2018)による解析的砂時計磁場モデルとの比較を行った。この解析では、分子雲コアが過去において形成された当時の半径R0や密度ρ0や磁場強度B0といった初期パラメータを決めることができる。FeSt 1-457の初期密度ρ0は、分子雲におけるインタークランプ物質の密度の典型値と比べて1桁高い密度を示すことがわかった。この濃密な初期密度は、B0の磁気を帯びた半径R0のフィラメント分子雲の臨界密度とほぼ等しい。したがって、臨界フィラメントの分裂がFeSt 1-457の起源になっていることが示唆される。
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