研究実績の概要 |
我々は、南アフリカ共和国で運用中のIRSF 1.4m望遠鏡と近赤外3色同時偏光器SIRPOLを用いた背景星の星間偏光測定に基づき、太陽系近傍の分子雲コアを取り巻く磁場構造の探査を進めている。2020年4月から2021年3月にかけては、2天体(BHR71: Kandori, R., et al., 2020, ApJ, 892, 128; CrA-SL42: Kandori, R., et al., 2020, ApJ, 900, 20)での結果を出版した。いずれの天体でも、分子雲コア表面を円弧状にカーブする磁場構造が発見された。このような構造は、超新星爆発などに起因する星間衝撃波との相互作用により、初期にコアを貫いていた直線磁場が、凍結磁場状況下での物質移動により引きずられて円弧状磁場に変化したとするとよく説明できる。このような機構の存在は、理論からの提案がある(井上-福井メカニズム)。これまでの分子雲コアの磁場構造探査の結果を総合すると、分子雲コアに付随する湾曲磁場には3つの形状タイプがある。1つは、砂時計型磁場で、赤道面がくびれて軸対称に歪んだ砂時計に似た形状の磁場構造を3天体(FeSt 1-457, B68, B335)の周りに発見した。このような構造は、凍結磁場状況下で物質集積によるコア形成が起こると自然に形成されることが理論的にも示唆されている。もう1つの形状タイプは、砂時計型磁場の中心と質量分布の中心がずれているタイプ(オフセット砂時計)である。分子雲コア1天体(CB81/L1774)での発見を報告した。このような構造は、もしコアの初期密度分布が非一様であったならば形成されうる。最後の形状タイプが、2020年度に2例を報告した井上-福井メカニズムで説明される湾曲磁場構造であり、星間衝撃波と磁場の相互作用が示唆される。
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