大質量星は、銀河進化に多大な影響を及ぼすが、その形成条件は未解明である。大質量星形成として分子雲衝突が観測的に有力となっている。私たちは,以前から分子雲衝突の3次元数値シミュレー ションを系統的に進め、分子雲衝突による高密度コア形成に対する分子雲内乱流や衝突速度の影響を調べ、乱流の効果だけでは大質量星形成可能な高密度コア形成には不十分であることを示した。そこで、本研究では、分子雲衝突で磁場の効果を考慮し、大質量星形成の可能性を調べた。 まず、大局的に一様磁場中に分子雲を仮定し、初期乱流速度場を加えて時間発展させ、近傍分子雲の磁場と密度の観測的関係が、一様磁場が4 μGの時によく再現することを明らかにした。 次に衝突方向に対して様々な方向の一様磁場を仮定し、典型的な衝突速度である10km/sで、大 きさと質量の異なる分子雲を衝突させ、大質量の高密度分子雲コア形成の可能性を調べた。その結果、磁場が弱い時と比較して、近傍の分子雲の磁場と密度を再現できる場合に質量がかなり大きく自己重力的に束縛された分子雲コアが多数形成されることを示した。こうした分子雲コアでは星形成が期待される。 10太陽質量を超える分子雲コアが多数形成され、大質量星形成の可能性を強く示唆する。この結果は日本天文学会で発表し、査読論文とし日本天文学会欧文誌に掲載された。 2年度以降、銀河系内で衝突速度が10km/sより大きな衝突分子雲が発見されていることから、こうした場合の大質量星形成の可能性を解明するために研究を進め、大質量分子雲コア形成には 衝突速度に応じて大きなサイズの分子雲が必要であることを明らかにした。その成果は、日本天文学会や国際会議で発表し、査読論文として国際的な学術雑誌で出版が決定した。 並行して観測研究者と系外銀河における分子雲衝突の共同研究も推進し、査読付きの論文を数編発表し成果を上げた。
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