研究課題/領域番号 |
19K03924
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
嶋作 一大 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00251405)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 銀河 / 銀河団 / 銀河の進化 |
研究実績の概要 |
現在の銀河は、銀河団に属しているかどうかでその性質が大きく異なる。この違い (環境依存性) がいつどのように発生したのかを明らかにするには過去の銀河団 (原始銀河団) の観測が必要であるが、これまでの原始銀河団探査は、完全性、純粋性、原始銀河団の物理的定義の明確さに問題があった。本研究は、これらの問題点のない (あるいは大幅に緩和した) 原始銀河団探査法を新たに開発し、z~2 (宇宙年齢30億歳) を主な対象にして実際に探査を行い、銀河団に属する銀河の性質を系統的に調べるものである。昨年度は新しい原始銀河団探査法を開発して実際にz~2の原始銀河団を75個発見した。その中の銀河を調べたところ、当時の宇宙の平均的な領域の銀河に比べて星形成を止めた銀河の比率が高いことがわかった。
上記の結果を受けて本年度は、星形成を止めた銀河の比率の進化 (時間変化) を追うために、より現在に近い z~1-1.5 (宇宙年齢40-60億歳) において、同様の原始銀河団探査を行なった。用いたデータはすばる望遠鏡広視野カメラで取られた22平方度という広天域のデータである。解析の結果、約5000個の原始銀河団候補を発見した。星形成を止めた銀河の比率を求めたところ、z~2の原始銀河団の値に近かった。z~2から増えていない理由は、今回調べた原始銀河団はz~2のものよりも質量が軽いため、そもそも星形成を止める効果が弱いからかもしれない。結果は論文にまとめて査読誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
用いた銀河カタログの性質や精度 (銀河までの距離や銀河の質量など) の評価に予想外に時間がかかった。また、精度が予想より悪かったため、それに合わせて原始銀河団探査の方法を調整する必要が生じた。新型コロナの影響で議論の頻度が減少した。
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今後の研究の推進方策 |
z~1-1.5の原始銀河団の性質をさらに調べるとともに、z~2の結果を合わせて、長い時間スパンでの原始銀河団の進化を議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、研究遂行に想定以上の時間を要したため。次年度はz~1-1.5で見つけた原始銀河団を中心に、銀河団の性質をさらに調べたい。次年度は1,330,000円使用する予定である。
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