研究課題
現在の銀河は、銀河団という銀河の大集団に属しているかどうかでその性質が大きく異なる。最も顕著な違いとして、銀河団に属している銀河は星形成を止めてしまったものが多いことが挙げられる。こうした違いがいつどのように発生したのかを明らかにするには過去の銀河団 (原始銀河団という) を調べることが必要だが、これまでの原始銀河団探査は、完全性、純粋性、原始銀河団の物理的定義の明確さに問題があった。本研究は、これらの問題点を大幅に緩和した原始銀河団探査法を新たに開発し、z~2 (宇宙年齢約30億歳) を主な対象にして実際に探査を行い、銀河団に属する銀河の性質を系統的に調べるものである。z~2 の原始銀河団の探査が成功したのを受けて、より現在に近い z~1 (宇宙年齢約60億歳) の原始銀河団を同様の手法で探査した。用いたデータはすばる望遠鏡の可視広視野カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) で得られた 22 平方度という広天域の多色撮像データである。発見した約 5000 個の原始銀河団についてそのメンバー銀河の性質を調べたところ、銀河団のほうが重い銀河が相対的に多いこと、重い銀河ほど星形成を止めた銀河の比率が高いこと、中心銀河が星形成を止めている銀河団ではメンバー銀河も星形成を止めたものが多いことなどを発見した。これらの結果をもとに銀河団のメンバー銀河の成長と星形成停止のメカニズムを議論した。この研究は査読論文として出版されている。
3: やや遅れている
今年度の研究に用いたデータは、それ以前のz~2の原始銀河団探査に用いたデータよりも距離などの精度が低かったため、結果の信頼性の評価に時間がかかった。新型コロナによるコミュニケーションの遅れの影響も残った。
これまでの研究結果 (z~2とz~1の原始銀河団の性質) などを踏まえ、原始銀河団とメンバー銀河の進化を議論したい。
2022年度に使用額が少なかった主な理由は、研究がやや遅れていたこと、および、新型コロナの影響が残っていたために旅費をあまり使わなかったことである。2023年度の助成金は研究の完遂と発展に用いたい。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 519 ページ: 13-25
10.1093/mnras/stac3251
巻: 513 ページ: 3252-3272
10.1093/mnras/stac1049