研究課題/領域番号 |
19K03925
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廿日出 文洋 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70719484)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超高光度超新星 / 分子ガス / 星形成 / ALMA / VLA / 電波観測 |
研究実績の概要 |
太陽のおよそ10倍以上の質量を持つ星は、寿命を迎える際に超新星爆発を起こす。近年の大規模探査により、通常の超新星の10~100倍も明るい超高輝度超新星が発見された。しかし、超高光度超新星がどのような環境で発生するのか未だ解明されていない。本研究では、新たな観測手法として塵による吸収を受けない電波を用いることにより、母銀河の系統的な観測及び空間分解した観測を行い、超高光度超新星の発生環境を理解する。今年度は、以下の成果が得られた。 i) 大規模サンプルを用い、既存の観測では検出できなかった塵に隠された星形成の有無を系統的に探査するため、VLA電波干渉計を用いて母銀河の観測を行った。提案していた20天体のうち12天体の観測が実行された。観測は来年度も継続される予定である。 ii) 超高光度超新星が発生した場所において、星の材料である分子ガスの性質を探るため、ALMA望遠鏡を用いて超高輝度超新星2017egm母銀河の観測を行った。その結果、I型超高輝度超新星の母銀河において世界で初めて分子ガスの検出に成功した。空間的に分解した観測により、超新星が発生した環境は、通常の星形成環境と分子ガスの性質が共通することが分かった。投稿論文として準備中である。 iii) 超高輝度超新星と同様に大質量星の終末に起因すると考えられているガンマ線バーストの発生環境を探るため、ALMA望遠鏡を用いて14の母銀河における分子ガスの観測を行った。その結果、新たに8つの母銀河から分子ガスの検出に成功し、分子ガスが検出されたGRB母銀河のサンプルを2倍以上に増やすことができた。さらに過去のCO観測がある母銀河を文献から集めるることにより、世界最大のサンプルを構築した。他の星形成銀河との比較から、GRBを作り出す環境は他の星形成銀河における星形成環境と共通することを示唆する結果が得られた(査読付き論文として出版)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VLA電波干渉計を用いた母銀河の観測は、順調に実行されている。提案していた天体のうち、これまでに半数以上の観測が終了している。残りの天体の観測は、来年度に継続予定である。 高空間分解能電波観測による、超高光度超新星発生環境における分子ガスの観測については、超高輝度超新星2017egm母銀河のALMAによる観測が一部実行された。その結果、分子ガスの検出に成功し、発生環境に制限を与えることが可能となった。この成果は、査読付き投稿論文として準備中である。 このように、本研究課題で実施予定の研究について、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、観測が完了していない超高輝度超新星母銀河のVLA観測を継続して行う。現在の観測セッションで終了しない場合は、追加で観測提案を行い、データ取得を行う。 母銀河における分子ガスの観測については、既にALMA望遠鏡によって一部が実行されており、初期成果も出ている。その一方、より高空間分解能の観測および異なる準位の一酸化炭素輝線の観測は、未だ完了していない。この観測については、ALMA望遠鏡のサイクル7の観測提案が採択されており、来年度以降に観測が実行される予定である。データが取得され次第、解析を行い、既存のデータと合わせることで、超高輝度超新星の発生環境の理解を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
VLA電波干渉計およびALMA望遠鏡で取得される大規模データを解析するための高性能ワークステーションと大容量ストレージを購入する計画であったが、VLAによる観測は継続中であること、またALMAによる観測は一部未実行である。そのため、データの多くが揃う次年度にワークステーションおよびストレージの購入を行う。
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