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2021 年度 実施状況報告書

動的恒星系渦状腕が駆動する星間媒質の相転移過程における磁場の役割

研究課題

研究課題/領域番号 19K03929
研究機関国立天文台

研究代表者

岩崎 一成  国立天文台, 天文シミュレーションプロジェクト, 助教 (50750379)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード星形成 / 分子雲 / 銀河
研究実績の概要

今年度は分子雲形成局所シミュレーションと銀河大域シミュレーションをおこなったので、その結果について報告する。
分子雲形成局所シミュレーションでは、観測で見られるような細長いstriationと呼ばれる構造に似た構造が表れる。しかしこれまでのシミュレーションでは物理散逸を考慮していなかったために、微細構造のスケールは解像度に依存し、解像度を高くするにつれて、より微細な構造が現れる。本研究では両極性拡散を考慮した分子雲形成局所シミュレーションをおこなった。分子雲形成シミュレーションで考慮している化学反応ネットワークは、高密度領域での電離度を担う重元素イオンが考慮されていないため、両極性拡散係数を低コストで評価できるように、詳細な化学反応ネットワーク計算を基に拡散係数を密度の関数としてモデル化した。シミュレーションの結果、両極性拡散によって微細構造の形成が抑えられることがわかった。また両極性拡散は低電離環境下ほど効率的に働くので、外部紫外線量に微細構造が依存することがわかった。極めて低電離なので、外部紫外線がほとんど遮蔽されていると思われる高密度部でも電離度を供給できる。
銀河大域シミュレーションに向けて超新星爆発によるフィードバックモジュールを実装した公開コードAthana++を用いて、磁場を考慮した渦巻銀河の大域シミュレーションの初期設定をおこなっている。現在、富岳での本格計算に向けて準備を進めているところである(京都大学の杉村和幸氏、東北大学の富田賢吾氏との共同研究)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

分子雲の密度帯において重要な散逸過程である両極性拡散を考慮したシミュレーションを開始し、微細構造が外部紫外線に依存する可能性を示唆できた。また、渦巻銀河大域シミュレーションにも着手しており、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

当初は銀河大域シミュレーションにおいて粒子多体系を実装する計画で、実際に一様格子であれば重力多体系計算が可能なモジュールの実装は完了している。しかし静的格子分割や適合格子分割を用いると、格子配置に整合的な重力ポテンシャルを求めると必然的に離散化されたグリーン関数が非等方になることから、自己力の生じることがわかった。適合格子分割法を用いて、かつ粒子モジュールを実装している多くの公開コードでは、細かい格子の重力ポテンシャルを計算するときに粗い格子の重力ポテンシャルを境界条件としてのみ用いていて、異なる幅の格子間の重力ポテンシャルの整合性を捨てて、粒子の離散グリーン関数を等方にして、自己力の発生を緩和していると考えられる。我々は可能な限り格子配置に整合的な重力ポテンシャルを使った重力多体系モジュールの実装方法を引き続き検討しつつ、当面は固定された渦巻ポテンシャルを仮定した場合の銀河円盤における分子雲形成・破壊と磁場進化を調査する。恒星多体系による動的な渦状構造をシミュレーションに取り入れるため、別途粒子計算をおこない得た重力ポテンシャルの時間変動をインプットとして与えることも検討している。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画では予算の多くを旅費として支出する予定であったが、COVID-19の影響により出張ができなくなったため。
2022年度請求分90万円の使用計画としては、今年度も国外の出張がないものとして、研究成果発表のためのホームページ作成に20万円程度、ノートパソコンの購入に40万円程度、国内出張(新潟大(学会)、東北大学2回(研究打ち合わせ)、京都大学2回(研究打ち合わせ)、そのほか研究会への参加)で30万円程度の支出を計画している。
次年度使用分約120万円については、シミュレーションデータ保存のためのファイルサーバに約30万円、国内出張に30万円、プリンストン大学(研究打ち合わせ)と国外研究会参加のために60万を支出する計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] B-fields in Star-forming Region Observations (BISTRO): Magnetic Fields in the Filamentary Structures of Serpens Main2022

    • 著者名/発表者名
      Kwon Woojin, Kate Pattle, Sarah Sadavoy, Charles L. H. Hull, Doug Johnstone, Derek Ward-Thompson, James Di Francesco, Patrick M. Koch, Ray Furuya (including Kazunari Iwasaki)
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 926 ページ: 163~163

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac4bbe

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The JCMT BISTRO Survey: An 850/450 μm Polarization Study of NGC 2071IR in Orion B2021

    • 著者名/発表者名
      Lyo A-Ran, Jongsoo Kim, Sarah Sadavoy, Doug Johnstone, David Berry, Kate Pattle, Woojin Kwon, Pierre Bastien, Takashi Onaka, James Di Francesco, Ji-Hyun Kang, Ray Furuya, Charles L. H. Hull, Motohide Tamura, Patrick M. Koch (including Kazunari Iwasaki)
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 918 ページ: 85~85

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac0ce9

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 分子雲形成・進化シミュレーション:高密度クランプの重力不安定条件2022

    • 著者名/発表者名
      岩﨑一成
    • 学会等名
      日本天文学会春季年会

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公開日: 2022-12-28  

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