研究課題/領域番号 |
19K03930
|
研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
松本 桂 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (90362748)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 活動銀河核 / OJ 287 / 歳差連星ブラックホールモデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的である OJ 287 の歳差連星ブラックホール(BH)モデルの妥当性を検証するにあたり、2021年度は、歳差連星BHモデルの予測通りに2019年に発生した OJ 287 のout-type の熱的フレアに続き、2022年の夏頃に発生すると予測されているin-type の熱的フレア(伴BHが地球から見て主BHの降着円盤の手前側から反対側へ突き抜ける際の増光)へ向けた観測を継続した。また過去の光度曲線データを現在のフラックスレベルと比較するためBバンドの同時測光観測も引き続き継続した。なお2019年の熱的フレアに関し、当該時期の SOHO LASCO C3 の画像データの分析を進めた。現状の結論としては、増光時においても OJ 287 のフラックスは観測的な限界を下回っていたと判断せざるをえないと考えている。2021年度の観測の過程では、2021年12月から2022年1月にかけて OJ 287 の光度曲線に鋭い極小が示された。歳差連星BHモデルの軌道運動予測では、2021年12月頃に主BHの降着円盤への伴BHの衝突が起こったはずで、この後、降着円盤から引き抜かれたガスが光学的に薄くなり熱制動放射で明るくなるのが2022年の夏頃と期待される。今回観測された急速な減光現象について、伴BHの突き抜けとの関係や、活動銀河核ジェットの活動性の変化などが原因として考えられるが不明である。また上記の極小光度期に続き、OJ 287 は2022年3月から4月頃にかけてやや明るい状態となった。これが理論的に予測される増光かどうかを歳差連星BHモデルの理論的研究者と議論中である。なお雑誌論文について今年度は出版済は0、投稿中は3、作成中は2である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OJ 287 の歳差連星BHモデルの検証となる2つの結果(2019年および2022年に生じると予測される熱的フレア)のうち、2019年度に2019年7月の熱的フレアの結果を得ることができていること、また2019年度から始まり2021年度までを通してこれまでに継続的な観測を実施できていることから、おおむね順調に進展していると判断している。本研究課題以前から継続しているRcバンドの観測に加え、2020年度から開始したBバンドの観測データを外国の共同研究者と解析中である。すなわち、研究目的の(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、の ③ に記載した、歳差連星BHモデルの帰結である約110年の公転軌道軸の歳差周期における約56年周期の長期変動を検証するための基礎データの取得を継続できている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、本研究課題で OJ 287 の歳差連星BHモデルのもうひとつの観測的検証として挙げているところの、夏頃に生じると予測されるin-typeの熱的フレアの検出が最大の目的となる。またその前後に予測外の変動が生じたかあるいは生じなかったかを確かめることも必要である。OJ 287 は毎年6月から9月頃まで合となるが、現時点での理論予測では増光の開始時期は7月から8月となる見込みであるため、8月の下旬には観測を開始することで、熱的フレアの後半をとらえることができるのではないかと考えている。まずその観測結果から理論予測の妥当性を検証できると期待される。また厳密な一致からのずれがある場合は理論予測の不確定要素を補正するためのデータとなる。そのために、当初の計画通り、2019年度の経費で導入したCCDカメラを用い継続的な OJ 287 の多色測光観測を実施する。それにより、歳差連星BHモデルに従う、または矛盾する観測的挙動が示されるか検証を続ける。それらの結果は、2022年に予測されている熱的フレアへ至る過程における長期間の測光学的挙動の基礎データとなり、約60年前の測光結果との比較に用いることができる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に前倒し支払請求を行い、研究遂行における障害となっていた観測装置の不具合を解消したが、この支払時における残額である。本年度の様式F-2-1に記載した通り、前倒し使用の結果として経費の執行計画の見直しを行い、導入予定の機器の構成等を変更することとなるが、来年度以降は当初計画よりも使用可能な経費が減少することになるため、その一部として使用する計画である。
|