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2023 年度 実施状況報告書

可視光観測による OJ 287 の歳差連星モデルの検証

研究課題

研究課題/領域番号 19K03930
研究機関大阪教育大学

研究代表者

松本 桂  大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (90362748)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワード活動銀河核 / OJ 287 / 歳差連星ブラックホールモデル
研究実績の概要

OJ 287 の歳差連星ブラックホール(BH)モデルを検証するために、着目していた2019年および2022年の熱的フレアに引き続き、その後の同天体の挙動を把握するための可視光での多色測光観測を実施した。概観としては、OJ 287はやや暗い状態が続いた2022年に比べ約1等程度明るくなりつつ、これまでと同様の小規模な増減光を示していた。特に2023年6月から9月にかけてRcバンドで少なくとも約2等明るくなり、Bバンドでも同様の挙動であった。したがって同天体の長期的なトレンドとしては2023年で減光の底を打った可能性があり、全体的な増光傾向が今後も続くかどうか見極めたい。また上記の挙動を有意に上回る(2022年の熱的フレアを否定しうる)顕著な活動性は見られないことを確認した。

歳差連星BHモデルの妥当性の検証のしめくくりとして、同モデルに基づけば2022年の熱的フレアに付随する潮汐フレアが2024.5年頃に起こると予測されている。もしこの発生を確認できれば、本研究課題が想定する歳差連星BHモデルの検証は完了する。またこれは、2023年に共同研究グループの一部が離別して提示した別の連星BHモデルとの弁別としても機能する(2022年の熱的フレアの発生時期と予測されていた7月とは別に、主BHの降着円盤の状態によっては10月が候補のひとつに挙げられていたことがあったところ、10月にはそれらしい活動性がおよそ見られなかったことから、共同研究グループの一部が歳差連星BHモデルに対する疑義を主張し、BHの質量や連星軌道のパラメータが大きく異なる対立モデルを提唱し出版するに至ったできごとがあった)。したがって今後さらに1年、2024年も引き続き継続的な観測を行いたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

OJ 287 の歳差連星BHモデルの検証となる2019年および2022年に生じると予測された2つの熱的フレアの結果を得ることができており、それらの論文も出版された。また2019年度から2023年度までを通じて継続的な観測を実施できており、歳差連星BHモデルの帰結である長期変動を検証するための基礎データの取得が進んでいる。2022年7月の熱的フレアに関しては、太陽との位置関係により地上からは明瞭な観測的兆候をとらえられていない一方、その前後に得られた小規模増光などの観測結果は歳差連星BHモデルが予測した描像と一致している。また予測外の熱的フレアに相当するような増光も明らかに生じていなかったと今のところ結論付けられる。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断している。

今後の研究の推進方策

歳差連星BHモデルによれば、次回のOJ 287の熱的フレア(out-type)は2031年に生じると予測されており、増光現象を用いた理論モデルの検証の機会は当分やって来ない(なお、概要欄に記した2023年に提唱された対立モデルでは次回の増光時期を2026年~2028年と予想している)。いずれにしても現在の連星BHモデルに従うまたは矛盾する観測事実が示されるか検証を続けるために、同天体の長期的挙動を把握することが求められる。また2022年の熱的フレアは明確な検出には至っていないことからも、2024年に起こると予測されている潮汐フレアの検出を含めた調査を今後1年は続けることが歳差連星BHモデルの検証において有用である。したがって2024年度も継続的な OJ 287 の測光モニタ観測を実施したい。また継続的な多色観測は、次回の熱的フレアへ至る過程における光学的挙動の基礎データとなる。

次年度使用額が生じた理由

今後の研究の推進方策に記載した通り、2022年7月の熱的フレアの発生については蓋然性が高い一方で明確な検出に至っておらず、観測を今後1年継続し2024年中に起こると予測される潮汐フレアの検出を含めた調査を続けることが、本研究課題の目的である歳差連星BHモデルの検証において有用であると2023年度までに判断した。そのため本補助事業期間の1年間の延長申請を行い、承認を受けた。次年度使用額が生じた理由は、それにより最終年度に使用する予定であった機器等を2024年度の調達に後ろ倒ししたことによる。また現用の機器等に緊急性の高い問題は生じておらず、今のところ執行計画の見直しによる研究遂行上の制約は特に予想されないため、研究課題はこれまで通り遂行可能である。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] Institute of Nuclear Physics/Jagiellonian University/Pedagogical University(ポーランド)

    • 国名
      ポーランド
    • 外国機関名
      Institute of Nuclear Physics/Jagiellonian University/Pedagogical University
    • 他の機関数
      2
  • [国際共同研究] University of Turku/Aalto University(フィンランド)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      University of Turku/Aalto University
  • [国際共同研究] Tata Institute of Fundamental Research/Aryabhatta Research Institute/Gorakhpur University(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      Tata Institute of Fundamental Research/Aryabhatta Research Institute/Gorakhpur University
    • 他の機関数
      3
  • [国際共同研究] INAF/University of Siena/National Institute of Nuclear Physics(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      INAF/University of Siena/National Institute of Nuclear Physics
    • 他の機関数
      8
  • [国際共同研究] Boston University/University of North Carolina/Appalachian State University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Boston University/University of North Carolina/Appalachian State University
    • 他の機関数
      7
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      18
  • [雑誌論文] 大阪教育大学天文台の遠隔運用能力の実装と実運用2024

    • 著者名/発表者名
      松本 桂、光永 法明
    • 雑誌名

      大阪教育大学紀要. 人文社会科学・自然科学

      巻: 72 ページ: 57~66

    • DOI

      10.32287/TD00032802

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Catching profound optical flares in blazars2023

    • 著者名/発表者名
      Bhatta Gopal、Zola Staszek、Drozdz M、Reichart Daniel、Haislip Joshua、Kouprianov Vladimir、Matsumoto Katsura、Sonbas Eda、Caton D、Pajdosz-?mierciak Urszula、Simon A、Provencal J、G?ra Dariusz、Stachowski Grzegorz
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 520 ページ: 2633~2643

    • DOI

      10.1093/mnras/stad280

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Refining the OJ 287 2022 impact flare arrival epoch2023

    • 著者名/発表者名
      Valtonen Mauri J、Zola Staszek、Gopakumar A、他
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 521 ページ: 6143~6155

    • DOI

      10.1093/mnras/stad922

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The optical behaviour of BL Lacertae at its maximum brightness levels: a blend of geometry and energetics2023

    • 著者名/発表者名
      Raiteri C M、Villata M、Jorstad S G、他
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 522 ページ: 102~116

    • DOI

      10.1093/mnras/stad942

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 2021 superoutburst of the WZ Sge-type dwarf nova V627 Pegasi lacks an early superhump phase2023

    • 著者名/発表者名
      Tampo Yusuke、Kato Taichi、Kojiguchi Naoto、他
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 75 ページ: 619~633

    • DOI

      10.1093/pasj/psad023

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Observational Implications of OJ 287’s Predicted 2022 Disk Impact in the Black Hole Binary Model2023

    • 著者名/発表者名
      Valtonen Mauri J.、Dey Lankeswar、Gopakumar Achamveedu、他
    • 雑誌名

      Galaxies

      巻: 11 ページ: 82~82

    • DOI

      10.3390/galaxies11040082

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] On the need of an ultramassive black hole in OJ 2872023

    • 著者名/発表者名
      Valtonen Mauri J、Zola Staszek、Gopakumar A、他
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 525 ページ: 1153~1157

    • DOI

      10.1093/mnras/stad2249

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Extreme photometric and polarimetric variability of blazar S4 0954+65 at its maximum optical and γ-ray brightness levels2023

    • 著者名/発表者名
      Raiteri C M、Villata M、Carnerero M I、他
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 526 ページ: 4502~4513

    • DOI

      10.1093/mnras/stad3064

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [備考]

    • URL

      https://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/

  • [備考]

    • URL

      http://galaxy.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/

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公開日: 2024-12-25  

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