研究課題/領域番号 |
19K03932
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
武藤 恭之 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (20633803)
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研究分担者 |
橋本 淳 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, アストロバイオロジーセンター, 特任助教 (20588610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 惑星形成 / 電波天文学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ALMA望遠鏡の観測によって可能になった原始惑星系円盤の詳細構造の観測を推し進め、現実的な原始惑星系円盤の姿を解き明かすことを目標としている。初年度は、提案をしていたALMA望遠鏡サイクル6の観測が実行されて遷移円盤天体6天体のデータが取得された。現在、それぞれのデータの解析を進めている。また、本課題開始以前に取得されていた観測データに関する共同研究にも参加しており、TW Hya 星周囲の点源状構造の発見や CR Cha 星周囲のダスト・ガスの構造の解析、HD 142527 星周囲のガス・ダスト比の解析などに関わった。これらの結果は、いずれも様々な構造が原始惑星系円盤に存在していることを示している。特に、CR Cha や HD 142527 などで、異なる同位体のガスの分布や異なる遷移の分子輝線の画像が得られてきている。ガス観測は、ダストの観測に比較すると高解像度の観測が少ないのが現状だが、これらの結果は、観測量に即して、原始惑星系円盤の主成分であるガスの分布を明らかにする手がかりとなるという点で科学的な意義のある結果である。実際、これらのデータから、ガス・ダストの分布の違いが観測に基づいてより確実に議論できるようになってきた。 今後、手持ちのデータの解析を進める。我々のサンプルは数天体ではあるものの、明るい天体から暗い天体まで、観測的に異なる性質を持った遷移円盤天体のデータを手にしている。これらの比較を通じ、遷移円盤天体の普遍的な性質を探し、惑星形成のコンテクストの中で理解をしていくことを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALMA望遠鏡による観測が順調になされ、提案した全ての天体のデータが取得された。それらのデータの基本的な較正は行われており、現在データの質を詳しく検討している段階である。また、それ以前の ALMA 望遠鏡のデータについても着々と論文化が進められており、全体として概ね順調に研究が進捗しているものと考えている、
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今後の研究の推進方策 |
手持ちのデータの解析を継続して進め、それぞれの天体の個性を明らかにしていくとともに、全体を通じて共通の性質があるかどうかを探っていく。また、1天体でも論文化が可能と判断したものについては、論文化を進めていく。すでに論文化の段階にある天体については、引き続き進めていく。 初期の観測によって興味ある構造が見つかった天体については、ALMAやそれ以外の望遠鏡でのフォローアップ観測を提案していくことで、より深い理解を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、観測データ保存・解析のための物品購入、および共同研究のための共同研究者の旅費等に本研究費を使用することを予定していた。しかし、前者については、関連する研究のための別研究費に余剰が生じたことにより、そちらを用いて購入を行った。また、後者については、共同研究者との旅程の調整の結果、先方の持つ別財源での支出とすることとなったため、本研究費からの支出を行わないこととなった。 次年度について、当初は海外の共同研究者の招へい・海外出張・今年度に進めた研究の論文出版費用などに本助成金を充当することを予定していた。しかし、昨今の新型コロナウィルスの流行に伴い、ALMA望遠鏡をはじめとする様々な望遠鏡の運用計画・海外出張予定・物品購入などに変更が生じているところである。流行の推移を見極めながら、今年度に中止となった海外出張の実行可能性を判断する。また、大学における遠隔授業の対応などのために研究時間が少なくなる可能性もあり、本研究を推進するために、状況に応じて短期間の研究員雇用の可能性も検討する。
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