研究課題/領域番号 |
19K03937
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
中西 康一郎 国立天文台, アルマプロジェクト, 特任准教授 (60399277)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 爆発的星形成 / 電波干渉計 / データ解析 |
研究実績の概要 |
近傍銀河NGC253の中心核における星形成則と星間物質の性質をかつてない高い精度で決定し、スターバーストの起源を探ることが本研究の目的である。電波望遠鏡観測データに対して新たな処理・解析手法を開発し適用することによって、星形成活動の規模とその母体となる星間物質質量を高い精度で決定し、ひいては星形成則を高精度で導出することが本研究の目標である。 研究第2年度となる本年度は、本研究の核となる新しい解析手法、すなわちスペクトル画像データに含まれる分子・原子スペクトル輝線と連続波の分離手法の開発を進めた。第1年度中に検討した内容に加えて、新しい数理統計的手法の導入についても検討と試験を行い良好な初期的結果を得た。最終的にソフトウェアとして実装・利用する手法の検討を進めたが、慎重を期するため決定は次年度に持ち越しとなった。 本研究で使用するデータのうち、アルマ望遠鏡による国際大型観測プログラムによるNGC 253銀河の観測データは処理がおおむね完了した。一方で、超大型電波干渉計(米国)による観測データについては不足があることが判明したため、急遽観測所長時間に追加観測提案を行いデータが取得された。データ処理は現在も進行中である。 NGC 253銀河のデータ解析の開始が当初より遅延したため、既にアルマ望遠鏡によるデータを取得済みであった同じく爆発的星系銀河であるNGC 3256の電波再結合線データの解析を進めた。NGC 3256の中心核には、可視光では検出できず電波再結合線でのみその存在が把握できる、星間物質に深く埋もれた大質量星形成領域が存在することを初めて明らかにした。この成果は査読付き論文誌に掲載された(Michiyama, Iono, Nakanishi, et al. 2020; 10.研究発表、雑誌論文を参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べたように、本研究で利用するデータに不足があることが判明し、データ取得のための追加観測を実施した。そのデータ解析処理は現在進行中だが、当該データの較正処理および画像化処理の完了は、当初計画よりも半年遅れの次年度前半となる見込みである。これに伴って、研究の基礎部分である電波連続波エネルギー分布の確定もそれ以後にずれ込む見込みである。 第2年度中には天体観測データの処理、解析結果の解釈と議論を効率的に進めるため、観測データが所在する日本(国立天文台)に国内外の研究協力者に来訪していただき数週間の滞在中に共同作業を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により実現できなかった。代替策としてテレビ会議等によるコミュニケーションを図ったが、効率の低下は避けられず、データ解析および論文作成の遅れという結果を招いた。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度中に未完了となった、新しい手法に基づいて天体観測画像データを処理し、輝線と連続波の分離を実現する解析ソフトウェアの実装は、第3年度前半には完了する予定である。解析ソフトウェアの入力データとなる、追加取得された超大型電波干渉計データの画像化処理も同じく第3年度前半をめどに完了見込みである。第3年度後半には、実際に解析を実行して結果の早急な公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症感染拡大の影響により、参加を予定していた国内学会(日本天文学会春季・秋季年会)および国外開催の国際研究集会がオンライン開催に移行ないしは休止となった。また、国外から研究者を日本に招請し滞在期間中に共同研究を行う予定であったが、これも新型コロナウィルス感染症感染拡大により断念せざるを得なかった。これらの事由により、主に旅費支出が無く、次年度使用額が生じた。当該助成金は、第三年度に開催される国内学会及び国際研究集会(国外開催)の参加費・渡航費等に充当する予定である。第三年度(2021年度)の研究費は当該年度に当初予定していた事業、国内外の研究協力者との研究打合わせと研究成果の公表(論文出版)のための費用に充てる予定である。
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