研究課題/領域番号 |
19K03941
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 秀和 東北大学, 理学研究科, 教授 (00282814)
|
研究分担者 |
和田 浩二 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 主席研究員 (10396856)
奥住 聡 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60704533)
田中 今日子 東北大学, 理学研究科, 客員研究者 (70377993)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 惑星形成 / ダスト / 原始惑星系円盤 / 焼結 |
研究実績の概要 |
ALMAにより明らかにされた多数の原始惑星系円盤におけるリング状の間隙構造は焼結したダストの衝突合体を起こしにくい性質により形成されたとする説が提唱されている。また最近のALMA偏光観測より円盤ダストは比較的密な構造を持つことが示唆されているが焼結したダストの衝突合体は跳ね返りの効果で密な構造をつくることも予想されている。昨年度の研究で、跳ね返り条件はダストの配位数(構成粒子1つに対する接触点数)が重要であることが示されていた。 本年度は衝突で生成された様々な配位数をもつダストに対する跳ね返り条件を調べ、また配位数の増加過程についても調べた。その結果、焼結領域においてその場成長したダストは配位数の増加が押さえられ成長を継続でき、一方外側の低温領域で成長した後に焼結領域へ入ってきたダストは配位数が大きく、焼結による成長阻害が効くことが明かになった。 次に、ダスト衝突合体に対する衝突ダストの質量比依存性を調べた。特に質量比が3倍程度の時に破壊が最も起こりやすいことが明らかになった。この成果については論文投稿し印刷中である。衝突で発生した破片総量やサイズ分布についても詳細に調べる予定である。 さらに、ダスト衝突時の圧縮過程において2体の衝突ダストの間で充填率に差がある場合には従来モデルより大幅に圧縮が起きやすいという注目すべき現象も明らかになっている。今後これらについてもさらに詳しく調べる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原始惑星系円盤における焼結したダストの進化モデルをダスト衝突数値計算をもとに構築できた。また、衝突で放出される破片ダストの性質や衝突時のダスト圧縮過程についても新たな知見が得られ始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
衝突で放出される破片ダストの総量やサイズ分布を明らかにする。これは原始惑星系円盤ガスの光吸収係数や電離状態を左右する重要な量である。また衝突時のダスト圧縮過程についても、2体の衝突ダストの間で充填率に差がある場合に従来研究に比べ圧縮しやすいという現象が発見されているので、詳細に調べた上で圧縮モデルの再検討を行う。これにより、ALMA偏光観測で示されている比較的密な構造をもつ円盤ダストを説明可能であるかの検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
関連研究会を8月および3月に東北大学にて開催し、分担者を含む関連研究者と成果発表やそれに関する議論を行う予定であったが、昨年に引き続きコロナウイルス感染蔓延のために中止を余儀なくされ、そのために計上されていた参加者の旅費が支出されなくなった。また天文学会春季年会や他の研究会に参加予定であったが、それらも中止になりその旅費も支出されなかった。支出されなかった分は次年度のコロナウイルス感染終息後に研究会を開催や他の研究会への参加のための旅費に充てる予定である。
|