研究課題/領域番号 |
19K03942
|
研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
垰 千尋 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 研究員 (80552562)
|
研究分担者 |
三好 勉信 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20243884)
藤原 均 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50298741)
|
研究期間 (年度) |
2019-03-01 – 2022-03-31
|
キーワード | GAIA / 熱圏 / 電離圏 / 数値モデル / 宇宙天気 |
研究実績の概要 |
磁気圏変動の入力として重要である極域電場とオーロラ電子降込み(オーロラ電流)の変動を、全大気圏電離圏結合モデルGAIA(Ground-to-topside model of Atmosphere and Ionosphere for Aeronomy)に新たに含める改良を行った。極域電場の経験モデル[Weimer, 2005, JGR]を組み込み、TIMED衛星観測に基づく加熱率 [Zhang and Paxton, 2008, JASTP]を再現するオーロラ電流を与えた。極域電場モデルの駆動に必要な太陽風パラメータ(密度・速度・惑星間空間磁場2成分)と、オーロラ変動をコントロールする地磁気活動指数(Kp値)の観測データを、モデル入力データとして整備した。さらに、磁気圏電流をモデル内の電場計算において考慮することで、極域電場が低緯度まで侵入し、電離圏擾乱が中低緯度に広がるようになった。下層大気からの擾乱として、それまでのGAIA計算と同様に、モデルの低高度領域に気象再解析データの入力を行った。 拡張したモデルの評価のため、2017年9月に発生した太陽フレアが引き起こした磁気嵐イベントに適用した。モデルで求まった電子密度と、その変動を引き起こす電場・大気風速場・中性大気組成の全球分布を解析し、磁気嵐時の特徴的な変化が再現されていることを確認した。特に、電子密度や大気運動の変化が、極域のみならず低緯度にも広がっていることを確認した。モデルの改良により、観測された中低緯度の電子密度増大の再現性が向上したことが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい高速計算環境への対応に予想以上に労力を要したが、計画通りの進捗であった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、拡張したモデルを、長期(1年以上を想定)にわたって計算し、データベースを作成する。直前27日分の中間値との差分をとり、緯度・地方時・季節ごとに、差分値の分布の平均値と分散値を求める。差分値を、これらの平均値と分散値を使って規格化し、I-scale値を得る。令和3年度は、得られた赤道域・中緯度・高緯度のI-scaleが、太陽活動度および磁気圏活動度によってどのように値が変わるかを調査する。求めたモデルI-scaleの値で、電子密度最大値(foF2)と高度積算値(TEC)の増大が食い違う状況を抽出し、電子密度分布の時空間変動を解析する。観測地点の違いなのか、構造が水平および高度方向に局所的なのか、この変動の要因を明らかにする。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
既存PC利用のために急を要さず令和1年は購入を見合わせた、データ解析および出張・打ち合わせに必要なノートPCと解析・可視化ソフト一式を、次年度以降に購入する(令和2年度予定)。研究環境整備と維持のための計算関係消耗品を購入する(令和2年度)。モデル拡張と解析解釈についての研究分担者との研究相談の旅費、および、成果発表経費を計上する(令和2-3年度)。
|