研究課題/領域番号 |
19K03942
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
垰 千尋 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波伝搬研究センター, 研究員 (80552562)
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研究分担者 |
三好 勉信 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20243884)
藤原 均 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50298741)
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研究期間 (年度) |
2019-03-01 – 2023-03-31
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キーワード | GAIA / 熱圏 / 電離圏 / 数値モデル / 宇宙天気 |
研究実績の概要 |
磁気圏変動の地球大気圏への入力として重要である極域電場とオーロラ電子降込みの変動を、全大気圏-電離圏結合モデルGAIA(=Ground-to-topside model of Atmosphere and Ionosphere for Aeronomy)に新たに含める改良を行ってきた。この改良版モデルによる電離圏電子密度分布の再現性を評価するために、全球測位衛星システムGNSSによる電離圏電子密度高度積算値(全電子数)およびイオノゾンデ観測による電子密度分布の観測と、事例および統計の両観点で比較を行った。 事例として2017年9月27-28日の磁気嵐イベントについて観測との比較を行った結果、中低緯度の電場侵入およびダイナモ擾乱に伴う全電子数変動と電子密度高度分布によい再現性が確認された。他方、極域の全電子数の値や分布の詳細には観測とモデルで違いがあることが分かった。2019~2020年の計算結果を用いて磁気嵐時の全電子数をsuper-posed epoch解析して観測と比較した結果も、事例比較と同様に、中低緯度の全電子数のよい再現性の反面、極域における全電子数の値および分布に観測との相違が見られた。極域の全電子数分布に対しては、Weimer経験モデルの代わりにSuperDARN観測から導出されたポテンシャルマップを利用することによって、再現性が向上することが確認された。また、オーロラ電子のエネルギー分布を仮定しているが、分布が変わると全電子数分布も変化し影響があることが示唆された。 改良後のモデル計算に電離圏嵐指標I-scaleを適用して電離圏嵐の発生を検出し、再現性を評価した結果について研究会および機関誌にて発表し、モデル改良による観測との詳細比較の成果については国内外の学会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近の観測解析の進展を受けて、当初の計画には含めていなかったが、観測との詳細な比較解析と考察を行った。それにより、モデル改良の効果と課題をより詳細に評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年(2021年)度に取り組んだ電離圏電子密度増大の観測再現性の評価によって明らかになったモデル課題について検討する。求めたモデルの電離圏嵐指標I-scaleの値で、電子密度最大値(foF2)と高度積算値(TEC)の増大が食い違う状況を抽出し、電子密度分布の時空間変動を解析する。観測地点の違いなのか、構造が水平および高度方向に局所的なのか、この変動の要因を明らかにする。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染予防のため、国内外の研究会が引き続きオンライン開催となった。出張・打ち合わせ用の経費を次年度使用に繰り越した。 モデル拡張と解析解釈についての研究分担者との研究相談の旅費、計算関係の消耗品、解析・可視化ソフト、および、成果発表経費を計上する。
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