本研究は、ハワイ・ハレアカラに設置が予定されている1.8mの低散乱望遠鏡(PLANETS望遠鏡)を用いて太陽系の氷天体の活動現象の解明を推進することを目的とする。PLANETS望遠鏡は東北大学が米ハワイ大学他と国際共同で進めているプロジェクトであり、中口径ながら低散乱で高コントラストな光学系を有し、氷衛星からの噴出物を始めとする惑星と衛星近傍の微弱発光の観測に対して自前の連続的観測を可能とする。本研究では、低散乱かつ高コントラストを達成する上で要となる、補償光学を備えたコロナグラフの開発を行い、天体輝面から0.2-10秒角の範囲において2-6桁の輝度差を有する対象の観測を実現することを目指す。令和3年度は主として、(1)PLANETS望遠鏡の主鏡の形状誤差の計測と修正研磨作業をすすめ、(2)ハレアカラ60cm望遠鏡に搭載する補償光学システムおよび可視高分散分光器の開発を実施した。 (1)本研究では、ロボットアームを用いた引き摺り3点法(Kurita+2015)を形状計測の基盤技術として利用した。本手法により計測された鏡面形状誤差はZernike第6項までを除いて0.76μmとなり、過去にITT/Exelisにより計測された形状誤差と整合する結果を得た。更にこれらの形状計測技術を用いて理想形状との形状誤差を導出し、修正研磨を実施することにより理想形状に近づけた。R3年度の作業により形状誤差を0.76μmから0.25μmまで向上させることができた。 (2) 前年度に実施した144素子のMEMS可変形鏡と波面センサーから構成される補償光学システムを設計をもとに、コロナグラフ光学系と分光器用ファイバーの入射機構を含めた補償光学コロナグラフを製作し、R4年3月にハワイ・ハレアカラ観測所の60cm望遠鏡に取り付けて調整を実施した。
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