研究課題
前年度にあらせ衛星とVan Allen Probe衛星の磁場観測データから導出した地磁気脈動指数(地磁気脈動のパワースペクトル密度の周波数積分値)の位置依存性について調査するため、磁気地方時ごとに地磁気脈動指数の平均分布を調べた。調査の結果、衛星が夜側に位置する場合に地磁気脈動指数が増加することがわかった。この磁気地方時分布から地磁気脈動指数の補正を行った。補正後の地磁気脈動指数のうち静止軌道に位置するものを抜き出し、静止軌道衛星・高緯度地上磁場観測によって導出された地磁気脈動指数との比較を行なったところ、両者に高い相関がみられた。また、地磁気脈動指数の時間変化と太陽風パラメータ(太陽風動圧・太陽風速度)の時間変化との比較を行なったところ、高い相関を示した。太陽風動圧変化は地磁気脈動指数に対して1.5日程度早く上昇する一方で、太陽風速度変化は地磁気脈動指数に対して、1-2日遅れて上昇することがわかった。この結果は太陽風速度上昇に伴って地磁気脈動の活動が高くなるという過去の研究の報告とは異なり、太陽風動圧上昇によって内部磁気圏での地磁気脈動の活動が活発になることを示している。惑星間空間に於いて共回転相互作用領域(CIR)が存在する場合には、地球近傍で動圧上昇に対して高速風速度上昇が遅れて観測される。今回の結果は、解析を実施した2017年3月以降は平均的にCIR由来の地磁気脈動イベントが多かったということを示唆している。
3: やや遅れている
本研究で用いているあらせ衛星の磁場データは較正の状況によって、2~3mHzの周波数を持つ継続的な人工ノイズが乗る場合があることがわかった。対象としている地磁気脈動の周波数が1.6mHzから7mHzにあたることから、この人工的なノイズを除いた上で、地磁気脈動指数を導出する必要がある。本年度は、地磁気脈動指数を補正し、補正した地磁気脈動指数を太陽風パラメータと比較をする解析を進めてしまった後で、この人工的なノイズの存在に気がついたために、対応が遅れてしまった。一方、地磁気脈動指数導出のための計算手法や、衛星の位置による効果を取り除く手法は本年度で確立できた。研究としては進んでいる側面もあることから、当初予定していた研究計画よりもやや遅れていると判断した。
データ較正によって生じた人工的ノイズの除去をした上で、地磁気脈動指数の再計算を行う。人工的なノイズは、2~3mHzの決まった周波数を持つ規則的な正弦波であるため、機械的に除去することが可能である。ノイズを除去したのちに、改めて地磁気脈動指数を導出する。導出した地磁気脈動指数を太陽風パラメータと比較し相関を調べる。また、衛星で観測された高エネルギー電子フラックスとの関係も調べる。
新型コロナウイルスの影響によって国内会議や国際会議がオンラインでの実施になったため、予定していた渡航旅費を使用しなかった。未使用額は今後の解析の際に必要となるソフトウェアやPCなどの購入に使用する。
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