研究課題/領域番号 |
19K03949
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀 智昭 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任准教授 (30467344)
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研究分担者 |
西谷 望 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (10218159)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 磁気流体波 / 地球磁気圏 / 地球電離圏 / ULF波 / 環電流 / SuperDARN / あらせ衛星 |
研究実績の概要 |
まず、主として2012年とそれ以降の全SuperDARN電離圏レーダーの観測データを参照して、サブオーロラ帯緯度および中緯度帯における地球磁気圏のmHz帯磁束管振動観測イベントを収集し、そのデータベース化を行った。収集したイベントの一般的な特性についての解析を行っているところで、そのうち幾つかのイベントで、SuperDARNレーダー+Van Allen Probes (RBSP) 衛星、またはSuperDARNレーダー + RBSP + Arase衛星による非常に好条件での同時観測が成立しているイベントがあることが判明した。そこで、磁束管振動イベントの統計解析を進めつつも、上記の同時観測イベントの詳細解析を優先的に実施し、これらの事例では磁束管振動がどのような物理機構によって引き起こされているかについて、研究を行った。結果として、そのうちの1つイベントにおいては、環電流イオンのプラズマ圧力による直接駆動ではなく、プラズマ圧の空間勾配によって励起された磁気流体波(ULF波)として磁束管振動を説明できる可能性があるということが示された。この結果は、磁束管振動の励起機構としてこれまでに提案されている主な4つの物理プロセスに関して、やはりどのプロセスも振動を起こすことがあり、かつそれらのうちのどれが支配的に作用するかが時と場合によって異なるという重要な示唆が得られている。この観測結果について、国内関連学会および国際学会のULF帯磁気流体波セッションでの口頭発表を行った。またこの事例研究の詳細を報告するための論文を現在執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度中は、研究計画 1) サブオーロラ帯・中緯度帯での磁束管振動・伝搬の特性と外部条件依存性、及び 2) ERG, Van Allen Probes, SuperDARNレーダーの同時conjunction観測 の実施を計画していた。1) については、イベント収集およびデータベース化については大体の目処がついているものの、それらの統計解析は現在も続行中であり、論文化できる段階には達していない。一方で 2) については、1) より先行して進めたこともあり、好条件のイベントを同定することができ、また詳細な解析を終えて論文化の段階に入っている。これらのことから、現時点では当初の研究計画を概ね予定通りに実施できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、進捗状況で述べた計画 2) の内容を論文化すべく努力することと、計画 1) で述べた統計解析を進めて結果の概要を掴み、それらを研究成果として発表することに全力を尽くす予定である。また計画 1)に関して、2019年度で収集したイベント数が若干少なく、統計的解析の精度が期待していたほど出ない可能性がある。初期解析の結果、もしそのようなことがわかれば、期間を伸ばすなどして、より多くの観測イベント収集を行う。コロナウィルス禍の影響で国内・国際学会が軒並み中止またはオンライン化に動きつつあるが、本研究計画で出張及び研究発表を行うことを予定している学会はオンライン開催が決まっており、成果発表を行うこと自体は問題ないと考える。しかしながら、学会のオンライン化により、学会出席のために計上していた国内・国外旅費の執行に関して、より柔軟な対応を考えていく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関して、大容量記憶装置は購入できたものの、若干の仕様変更を考慮した結果、予定していた計算機サーバーの購入を2020年度まで先送りしたことで、当初の執行計画との差異が生じた。また執筆中の論文の出版費が今年度執行できなかったため、その分の経費を未執行である。どちらについても2020年度の前半で当該用途で支出予定である。
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