研究課題
研究計画 1) 磁束管振動・伝搬特性と外部条件依存性を達成するために、SuperDARNレーダー群のみで振動特性を同定可能なイベントの追加収集を昨年度行ったが、そこで集められたイベントの詳細な解析を今年度実施した。その結果、外部条件依存性を統計的に明らかにできるほどには多くの事例は収集できなかったものの、特に中緯度~サブオーロラ帯緯度における磁束管振動の伝搬特性を観測に基づく統計によって特定できる程度には、事例を集めることができた。そのデータセットを用いて、サブストームの開始前後の磁力管振動の伝搬方向を調べたところ、サブストーム開始の経度付近から東西に広がる方向に伝搬していることがわかった。この結果は、より高緯度側にあるオーロラ帯での同様の伝搬特性と類似しており、そのことから、オーロラ帯とサブオーロラ帯とで共通する物理メカニズムにより、磁力管振動が東西に伝搬して広がっていくということが示唆された。研究計画 2)の衛星+レーダーの同時共役観測の解析については、一通りの解析を終えてもう少しで論文化が完成するところまで来ている。また、同じデータセットを用いることで、サブオーロラ帯での大規模電場構造(SAPS: Subauroral Polarization Streams)の磁気圏-電離圏共役観測研究を行うことができるので、磁束管振動の電場振動が重畳しているベースの電場として重要であるSAPS電場について、その時空間構造や粒子分布との関係について解析を行った。また研究計画 3) オーロラ帯の磁束管振動減少に関する高エネルギー粒子スペクトル変動・空間勾配の解析に関しては、粒子軌道計算を行い、理論的な見地から、夜側から朝側に向かって内部磁気圏をドリフトしていく高エネルギー電子雲の空間発展の性質を検証した。
4: 遅れている
研究計画 1)と2) については、収集した事例について大体の解析を終了し、論文化の段階に入っているが、残念ながら今年度中の完成には至らなかった。理由の1つは、研究計画 2)に付随して行った大規模電場構造の解析に予想以上の時間を要したことが挙げられる。また昨年度に引き続きコロナ禍という状況で国内外の研究会及び学会にオフラインで参加することができず、特に海外の研究者との議論を行う機会が十分に得られなかったこともある。一方で、大規模電場構造に関する結果や、研究計画 3)に関しては観測を補足する理論的な検証を進めることができている。
研究期間を当初計画より1年延長することとして、その1年の間に、これまでに各研究計画で得られている結果を論文化して成果とすることを最優先にして研究を実施していく。また特にレーダー観測の専門家など、海外の研究者との議論についてこれまで以上にオンライン会議等の機会を利用し、議論を深めていく。また明るい材料として、国内外の学会の現地開催が徐々に始まりつつあることがあるので、依然として状況について不透明な点も多いが、可能であれば国内・国外旅費を積極的に活用することで現地に赴き、研究に関する議論や成果の発表を行っていくつもりである。
昨年度に引き続きコロナ禍という状況で国内外の研究会及び学会にオフラインで参加することができず、旅費のほとんどを執行できなかったことが、一番大きな原因である。また成果論文の出版が遅れているため、出版費として計上している経費の執行も遅れている。来年度は機会を捉えて国内外の研究集会・学会に参加し、かつ論文出版を確実に進めることで、必要経費の執行を行っていく予定である
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Geophysical Research Letters
巻: 49 ページ: -
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Journal of Geophysical Research: Space Physics
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