研究課題/領域番号 |
19K03951
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
野口 克行 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (20397839)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火星 / 大気波動 |
研究実績の概要 |
今年度は、数値モデルによるデータ解析を実施した。研究協力者から提供された火星大気大循環モデル(MGCM)による計算結果を用いて、火星大気の主成分である二酸化炭素(CO2)の凝結が起こるようにした場合(オンにした場合)と、凝結が起きないようにした場合(オフにした場合)を比較することで、CO2凝結が大気波動の活動にどのような影響を与えているのかを調べた。CO2の凝結が発生すると、気温が凝結温度以下にはならないため、大気波動にとって減衰効果となり得る。例えば、大気重力波にとっては浮力による復原力が抑えられるため、その活動も弱められる可能性がある。以前の数値モデルのデータ解析のときと同様に、数値モデルで計算された気温の高度分布に対して鉛直波長4km以下のハイパスフィルタを掛けることで、気温擾乱を抽出した。この気温擾乱を大気重力波によるものとみなして、波の活動度(ポテンシャルエネルギー)を計算した。解析対象とした季節は、北極域が極夜となる時期、つまり北半球の冬から春に相当する時期(Ls=270-300度)である。その結果、CO2凝結をオンにした場合には観測結果と同様に現れていたポテンシャルエネルギーにおける東西波数2の構造が、CO2凝結をオフにした場合には小さくなることがわかった。これは、CO2凝結の有無が大気重力波の活動度に影響を及ぼしていることを示唆している。ポテンシャルエネルギーは気温擾乱だけでなく、背景の大気安定度(ブラントバイサラ振動数)にも依存するため、大気安定度が大きく変化している可能性も考えられたが、両者のケースに大きな違いは見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画において挙げた解析をおおむね実施し、対象データに対して計画時に想定した処理を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍のために海外渡航ができず共同研究者との十分な打合せができなかったために議論が不足している点があり、海外渡航が可能になり次第必要な議論を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のために海外渡航ができず共同研究者との十分な打合せができなかったために議論が不足している点があり、海外渡航が可能になり次第必要な議論を行うために旅費として用いる予定である。また、追加のデータ解析を行うため、計算機およびその周辺機器の整備に使用する予定である。
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