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2019 年度 実施状況報告書

小惑星における流体存続期間の推定

研究課題

研究課題/領域番号 19K03952
研究機関岡山大学

研究代表者

国広 卓也  岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (30432628)

研究分担者 小林 桂  岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (20325129)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードコンドライト / コンドリュール / 流体プロセス / 小惑星 / 微量元素
研究実績の概要

小惑星は太陽系円盤にて形成した物質が 46 億年前に集積した天体で,放射壊変や衝突現象によって加熱され化学平衡に近づき,現在に至る年月の中で化学及び物理プロセスを経て多様性を獲得する.小惑星物質の進化における流体の寄与は顕著で,あらゆる炭素質コンドライトに水質変成の痕跡が確認される一方,流体プロセスの継続期間について,定量的に論じるに至らない.
炭素質コンドライトに含まれるコンドリュールは太陽系円盤で形成され小惑星に集積した後に流体と反応し,アルカリ元素は再分配されたとみなすことができる.本研究の目的は,流体に対して反応性の高いアルカリ元素の分布から流体プロセスの痕跡を求め,初期数百万年に限定することなく,小惑星構成物質が最後に流体と反応した年代を明らかにすることである.
コンドリュールは太陽系円盤で形成され,その形成年代は Pb-Pb 法などですでに求められている.コンドリュールに含まれる,流体との反応性の高い部分に注目し,この年代を求めることで小惑星における最近の流体プロセスの検知を試みる.
局所微量元素分析法確立,隕石試料の記載,並びに流体プロセスの年代決定を計画するところ,初年度は隕石試料を構成する各鉱物の微量元素濃度を求めるため,また試料抽出法の妥当性を検証するため,局所微量元素分析法の開発に取り組んだ.標準試料を整備し,レーザープローブ ICP 質量分析法と二次イオン質量分析法によりこれらを分析した.それぞれの手法を用いた分析について感度,精度及び確度を定量的に比較し,双方を相補的に組み合わせた分析法を開発した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は,先に述べたよう,局所微量元素分析法確立,隕石試料の記載,並びに流体プロセスの年代を決定を計画している.初年度は隕石試料を構成する各鉱物の微量元素濃度を求めるため,また試料抽出法の妥当性を検証するため,局所微量元素分析法の開発に取り組むことを予定していた.
コンドリュールから化学的に抽出されるメソスタシスに対し年代測定法を応用するにあたり,また対応する薄片に含まれるメソスタシス構成要素のアルカリ元素 (Li, Rb, Cs) 並びにアルカリ土類元素 (Sr, Ba) の濃度を求めるにあたり数十ミクロン程度の空間分解能をもつ局所分析が必要である.本研究では二次イオン質量分析法並びにレーザープローブ ICP 質量分析法を応用する.
標準試料を整備し,アルカリ (Li, Rb, Cs) 及びアルカリ土類 (Sr, Ba) に,B, Y, Zr, Nb, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Pb, Th, U を加え,計 27 元素について検量線を求めた.検出限界は元素により異なるところ,レーザープローブ ICP 質量分析法による Rb 並びに Sr の検出限界を 0.6 ppm 並びに 0.5 ppm と見積もった.この分析感度はメソスタシスを構成するガラス,輝石並びに斜長石に含まれる Rb 並びに Sr を記述するに十分である.
以上,標準試料を整備し,レーザープローブ ICP 質量分析法と二次イオン質量分析法にてこれらを分析し,それぞれの手法を用いた分析について感度,精度及び確度を比較した.この結果を評価し,双方を用いた相補的分析プロトコルを確立した.以上の計画と実施状況を鑑みると,現在までの研究はおおむね順調に進展しているといえる.

今後の研究の推進方策

分析における鉱物マトリクスの評価を終えるため,引き続き標準試料の整備に努める.同時に,隕石試料の準備並びにコンドリュールの記載を開始する.コンドリュールを隕石からハンドピックした後に分割し,一方を局所微量元素分析のための薄片に用い,他方を化学分析に利用する計画である.
炭素質コンドライトの 99% 以上が水質変質を受けているところ,変質程度には違いがあり,変質の程度と小惑星における流体の存続期間に相関があることを予測する.そこで,水質変質の程度の異なる炭素質コンドライドを比較分析し,系統的な分析を実施する予定である.水質変質の程度の異なるコンドライトを確保済みである.年代測定に先んじ,アルカリ並びにアルカリ土類に注目してコンドリュールの組織観察並びに局所微量分析解析を実施する.コンドリュールを構成する各鉱物相を記述し,それらの空間分布から水質変質の程度を定量的に記述する.
メソスタシスはその大きさから,構成鉱物を単離することが難しいため,化学処理にて抽出することを試みる.化学処理された試料から Rb 並びに Sr をイオン・クロマトグラフィーにて抽出した後,表面電離型質量分析法を用いて Sr 同位体組成並びに Rb/Sr 濃度比を求める計画である.メソスタシスが適切に抽出されていることを確認するために,対応する薄片を用いメソスタシスを構成する鉱物相のモード並びに微量元素濃度を求め,これらから見積られる元素の総量が,抽出されたものが調和的であることを検討する予定である.
今後,以上で述べたように水質変質の程度とその年代の関係を定量的に求める予定である.水質変質の程度と流体の存続期間の間に関係が見いだせない可能性がある.この場合,水質変質の程度が,流体の存続期間よりも温度圧力条件に依存する考え,新たな物質質進化モデルを検討する.

次年度使用額が生じた理由

消耗品の一部を,今年度に利用するに至らなかったため,これが次年度使用額として残った.次年度に消耗品として使用する計画である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Hypervelocity collision and water-rock interaction in space preserved in the Chelyabinsk ordinary chondrite2019

    • 著者名/発表者名
      Eizo Nakamura, Tak Kunihiro, Tsutomu Ota, Chie Sakaguchi, Ryoji Tanaka, Hiroshi Kitagawa, Katsura Kobayashi, Masahiro Yamanaka, Yuri Shimaki, Gray E. Bebout, Hitoshi Miura, Tetsuo Yamamoto, Vladimir Malkovets, Victor Grokhovsky, Olga Koroleva, and Konstantin Litasov
    • 雑誌名

      Proceedings of the Japan Academy, Series B

      巻: 4 ページ: 165-177

    • DOI

      10.2183/pjab.95.013

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Lithium- and oxygen-isotope compositions of chondrule constituents in the Allende meteorite2019

    • 著者名/発表者名
      Tak Kunihiro, Tsutomu Ota, Eizo Nakamura
    • 雑誌名

      Geochimica et Cosmochimica Acta

      巻: 252 ページ: 107-125

    • DOI

      10.1016/jb.gca.2019.02.038

    • 査読あり
  • [備考] 彗星(ほうき星)に乗ってきたチェリャビンスク隕石

    • URL

      https://pml.misasa.okayama-u.ac.jp/pages/projects/chelyabinsk-ja.php

  • [備考] Depository by Okayama University

    • URL

      https://medusa9.misasa.okayama-u.ac.jp/pub/bibs/893

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公開日: 2021-01-27  

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