研究課題
小惑星は太陽系円盤にて形成した物質が 46 億年前に集積した天体で,現在に至る年月の中で化学及び物理プロセスを経て多様性を獲得する.本研究の目的は,流体に対して反応性の高いアルカリ元素の分布から,小惑星構成物質が経験したプロセスを明らかにすることである.本研究において,局所微量元素分析法の確立,隕石試料の記載,隕石試料に対する局所微量元素分析法の応用,並びに流体プロセスの年代測定を実施した.レーザープローブ ICP 質量分析法および二次イオン質量分析法それぞれの感度,精度及び確度を定量的に比較し,双方を相補的に組み合わせた分析手法を確立した.コンドリュールに含まれる変質ドメインを意識し,局所分析法を相補的に組み合わせ微量元素 26 を定量分析した.該当コンドリュールに対して全岩分析を実施し,局所分析の結果とあわせ,コンドリュールと反応した物体の化学組成を求めた.この物体は流体でなく,ケイ素に富むメルトであることがわかった.このメルトがアルカリ元素のみならず希土類元素に富むことから,分化天体内部で発生したメルトと反応したことが推察される.コンドリュールは太陽系円盤で形成したのち,分化天体に滞在し,こののちに氷に富む天体に移動し水質変質を経験したと考えることができる.コンドリュールに酸を用いたステップワイズリーチング法を応用し,コンドリュールをガラスと非ガラスに分離した.これらに対し系統的に Rb-Sr 年代測定法を応用した.Rb-Sr 年代測定法により求められる年代は,Pb-Pb 年代測定法によるそれより数億年若い年代を示した.コンドリュールが最後に滞在した小惑星において,水もしくは氷がこの期間存在し,その後に水としてコンドリュールと反応したことを示す.コンドリュールが太陽系初期において,二つの天体にてまったく異なる変質を経験したことが明らかになった.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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