研究課題
ピックアップイオンを含む斜め衝撃波のPIC計算結果の解析を進めた。衝撃波で反射したピックアップイオンが上流に波動を励起し、これが太陽風とともに下流に伝搬して衝撃波下流の電磁場構造を大きく変えることがわかった。また一部のピックアップイオンは衝撃波ドリフト加速と呼ばれる機構を経て非熱的エネルギーにまで加速されることがわかった。非熱的成分の生成にはイオンジャイロ周期の逆数の100倍程度の時間が必用であることを確認した。この値は過去にハイブリッド計算で示された値とも整合的である。3次元MHD計算データと組み合わせたテスト粒子計算では、太陽から50天文単位の位置に内側境界を設定し、ここに到達した宇宙線粒子の到達位置分布を調べた。粒子エネルギーが10GeV程度の宇宙線は高緯度領域に多く到達することがわかった。これは太陽磁場の極性が北向きの場合に見られる傾向で、終端衝撃波における磁場勾配ドリフト運動が原因であることがわかった。粒子エネルギーが1000GeV程度になると、粒子の到達位置のピークが中~低緯度領域になり、太陽圏尾部により多くの粒子が到達する傾向が見られた。結果をActa Physica Polonica B誌に発表した。またその後、計算で扱う粒子数を3百万個から10億個に増やして統計精度を上げた。その結果、内側境界に到達した宇宙線粒子の到達位置分布に複数のピークが確認できた。これらのピークがどのような粒子群によって形成されるのかの解析は今後の課題である。
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