研究課題/領域番号 |
19K03960
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 克徳 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50604815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大気海洋相互作用 / 黒潮 / 梅雨前線 / 領域海洋モデル / 東シナ海 / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
2021年度に引き続き東シナ海の長期の海面水温上昇に対する大気応答、特に降水量の応答についての解析を行った。まず観測データと再解析データを用いて1901年以降の6月平均の日本周辺の降水量の線形トレンドを調べたところ、九州南部から東シナ海北部にかけて、統計的に有意な正のトレンドが見られた。これは1901年以降の長期間に梅雨前線に伴う降水量が増加していることを示している。 次にこの九州南部から東シナ海北部にかけての降水量のトレンドに対する東シナ海の海面水温上昇の寄与を調べるために、領域大気モデルWRFを用いた数値シミュレーションを行った。まず側面境界値を再解析データ、海面水温の境界値を衛星データで与えた1991~2010年の6月の標準実験を行った結果、この実験でのモデルの降水量は衛星観測による降水量の気候値をよく再現していた。この実験をベースとして東シナ海の長期の海面水温上昇の影響、特に黒潮流軸付近と大陸棚上で海面水温上昇が大きいことの影響を調べるために、海面水温の境界値を海面水温上昇の空間パターンを元に変化させた感度実験を複数ケース行った。この結果、現在より黒潮流軸付近と大陸棚上の海面水温を上げた実験において、九州南部の6月の降水量に有意な増加が見られた。同様に海面水温を下げた実験においてもおおむね整合的な計算結果が得られた。これらの結果は、観測データと再解析データから得られた降水量の増加トレンドと整合的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域大気モデルWRFを用いた東シナ海の長期変化に対する数値シミュレーションを開始しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に行った領域大気モデルWRFを用いた数値実験について、この結果をもとにして様々な設定の実験を追加して行い、東シナ海の海面水温上昇の大気への影響とそのメカニズムの詳細についての解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外学会での成果発表の機会がなくなり、その費用がかからなかったため差額が生じた。使用計画としては、海外学会での成果発表が可能な場合にはそのために使用する。
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