研究課題/領域番号 |
19K03962
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保川 厚 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特任教授 (00178039)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海洋循環 / 東向きジェット / 西岸境界流続流 / 再循環 |
研究実績の概要 |
中緯度上層海洋の循環は主には風により駆動され、偏西風帯の高緯度側には低気圧性の亜寒帯循環、低緯度側には高気圧性の亜熱帯循環と呼ばれる循環が生じ、その海洋の西端にはそれぞれ低緯度向きと高緯度向きの西岸境界流と呼ばれる強い流れが生じる。黒潮は亜熱帯循環の西岸境界流であるが、それは循環境界まで行くことなく離岸し、東向きの続流ジェットを形成する(早期離岸)。早期離岸はシンプルなモデルでも生じるが、この続流ジェットの緯度とその長さの決定要因、および、ジェットが存在するための外部条件は未だ明らかではない。本研究では、シンプルな数値実験と理論的研究により、この問題の根本的理解を目指している。2021年度には、早期離岸ジェットの南北プロファイルとその緯度を議論するための2層モデルに基づく理論を発展させ、それと風強制の南北分布と乱流強度を変えた多数の数値実験と比較した。理論モデルの解は、風強制の南北分布と鉛直構造が与えられていれば、離岸ジェットの緯度を含む構造は2つの変数に依り決定する。しかし、ジェット緯度が循環境界に近くなる風強制分布を与えた場合には、ジェットの強度のような1変数で解は決定する。他方、循環中心が南に寄ったような風の場合には、ジェット強度に加え、ジェット中心流線をスベルドラップ内部領域の東向き流の中心流線に一致するように選ぶと、理論は実験を概ね再現できることを示した。この結果は専門誌に投稿し、現在査読中である。他方、ジェットの長さに関しては、引き続き西岸からの渦位強制と内部領域の風強制を分離したモデルで、乱流渦位フラックスとエンストロフィーフラックスの解析を中心、内部領域での背景南北流の有無が続流・再循環システムに及ぼす影響を調べている。どのように記述し、理論化していくが、現在の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に最も重要な理論部分を論文にまとめ、投稿した。この論文が受理されれば目的のかなりの部分は満たされたと言えるが、もう一つの長さに関する課題は現在進行中である。この部分も早期の論文化を目指すが、2022年度は最終年度であり、当該分野の長い論文審査期間を考えると年度中の受理に間に合わない可能性がある。その場合には掲載料を支払えなくなる可能性もあり、そのことを考慮するとやや遅れていると判断するのが妥当であろう。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は最終年度である。まず行うべきことは現在審査中の論文を、査読コメントに従って必要であれば追加計算なども含め、受理に持っていくことである。もう一つは、続流ジェット・再循環システムの長さの決定機構に関する研究の計算及び解析を進め、論文にして投稿することである。また、当初の計画には入っていないが、余力があれば、多層モデルを作成し、多層での早期離岸・続流ジェット形成についても研究を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で予定していた出張が中止となり、また、論文作成の若干の遅れ故に、2本目の論文の英文校正費と1本目の論文の掲載料が繰越になっている。2022年度は、英文校正費、論文掲載費に加え、まとめの年なので、これまでの研究資料・データの整理解析補助のための人権費、また、状況によってはスーパーコンピューターの使用も考えている。
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