中緯度上層海洋の循環は主には風により駆動され、偏西風帯の高緯度側には低気圧性の亜寒帯循環、低緯度側には高気圧性の亜熱帯循環と呼ばれる循環が形成される。そして、それらの循環の西端にはそれぞれ低緯度向きと高緯度向きの西岸境界流と呼ばれる強い流れが生じる。黒潮は亜熱帯循環の西岸境界流であるが、それは両循環の境界まで行くことなく離岸し、東向きの続流ジェットを形成する(早期離岸)。早期離岸はシンプルなモデルでも生じるが、この続流ジェットの緯度とその長さの決定要因等は明らかになっていなかった。本研究では、シンプルな数値実験と理論的研究により、この問題の理解を目指してきた。 早期離岸続流ジェットの緯度に関しては、続流域の南北プロファイルを表現する理論モデルを構築し、2つのパラメータを与えればジェットの緯度を含む流れの南北分布が決定すること、また、数値実験と併せて、ジェット中心の流線は風成循環の中心流線にほぼ一致することを示した。この部分の研究成果は、専門誌に掲載済みである。 令和5年度は、ジェットの東端の問題に焦点を当てた研究のまとめと論文作成を中心に進めた。西岸境界流続流ジェットは、西岸域の渦位ダイポールにより駆動される。本研究では、風による大規模な循環と続流ジェットを別々に扱えるモデルを作成し、まず、大規模な流れの場がない場合のジェット・再循環系の東端の形成について調べ、次に、風による大規模な流れ場のジェット・再循環系への影響を調べた。特に、南下流成分がある場合にはジェットの東への伸びは著しく妨げられることを示し、また、続流ジェットのその南下流成分の強さへの依存性を調べた。これらの内容は、令和5年秋に学会発表するともに、論文を専門誌に投稿した。
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