研究課題
現実の地球において観測されるマッデン・ジュリアン振動(MJO)の東進をよく再現する全球雲解像モデルNICAMを水惑星という単純化した環境のもとで使用することで得られた水平格子間隔220 km, 112, km, 56 km, 28 km, 14 kmの各設定における5年分の基準実験データの解析を引き続き進めた。MJOに対応する時空間スペクトル解析を施すと水平格子間隔28 km以下と比較して56 km以上では東進速度が有意に小さいことについて、MJOの対流活発域に生じる相関規模の渦擾乱が下層風速の強化によって海面からの潜熱供給を強めることにより対流活発域における正のフィードバックをもたらしていることが原因である可能性を指摘した。また、MJOを変質させうると指摘されている環境場の代表的な要素についての感度実験の結果の解析を進めている。さらに、水惑星において現在気候とは異なる地軸の傾きを与えた実験において生じる環境場の変化による影響についても考察を行なっている。本課題においてMJOの東進速度と組織化およびその解像度依存性の関係が明らかになれば、現在富岳などのスーパーコンピュータを用いて行われている季節予測実験等への 波及効果が大きい。 MJOの西側に生じるロスビー応答成分が台風発生の引き金となることから、台風の季節予測への貢献も期待される。全球雲解像モデル比較プロジェクトDYAMOND2においては、各国の研究機関のモデルにおいて再現されるMJOの振幅と伝播特性が大きく異なることが明らかになっているが、その理由を理解する助けになることも期待される。本課題で得られた知見についてはこれらの関連研究と随時情報交換を行っている。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画に記載の実験について問題なく進み、論文化のための解析と解釈を進めている。課題代表者が参画している別課題において実施された、地軸の傾きを変化させた水惑星実験結果のデータ提供を受けられるようになったことから、課題の実施期間を延長して有意義な比較解析を進めている。
DYAMONDなどのプロジェクトを通じて各国で開発の進んでいる全球雲解像モデルの実験結果も一部入手可能になっている。国外での研究集会への参加も再開されつつある状況を併せて活用して関連研究者との意見交換を行い、単一のモデルにとらわれない包括的な考察を行う予定である。
課題代表者が参画している別課題において実施された、地軸の傾きを変化させた水惑星実験結果のデータ提供を受けられることが2021年度後半に判明したことから、課題の実施期間を延長して研究を拡大している。その実現のために2021年度は出費を抑制して、追加の解析完了後に必要となる旅費・成果発表のための費用などを2022年度に繰り越した。
すべて 2022 2021
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
