研究課題/領域番号 |
19K03967
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 純至 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00726193)
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研究分担者 |
毛利 英明 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 室長 (10354490)
新野 宏 東京大学, 大気海洋研究所, 名誉教授 (90272525)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 線状降水帯 / 乱流 / 風洞実験 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
実際の豪雨事例の環境場のもと、積乱雲がバックビルディングにより上流側に次々と形成し、降水システムとしては永続的に維持される、線状降水帯のシミュレーションを行った。高解像度のシミュレーションにいて降水システムの構造の詳細を明らかにするとともに、積乱雲の潜熱加熱による大気下層の低圧部が上流の収束を強化するフィードバックによる維持機構の存在を示した。様々な水平解像度(100mから2kmまで)のシミュレーション結果を比較し、解像度依存性を調べたところ、降水システムの再現のために水平解像度1km以下とする必要があった。このシミュレーション結果の解析を引き続き行った。いくつかの追加の解析(線状降水帯が定常に達するまでの時間発展の詳細、コールドプールの有無による降水帯の位置への影響の検討、環境場の絶対湿潤不安定の影響)を行い、成果をとまとめた論文が米国気象学会のJ. Atmos. Sci.誌に掲載された。 乱流パラメタリゼーションの1手法として、深層学習の活用を検討している。気象研究所の大型風洞において測定された風速の時系列データをトレーニングし、long short-term memoryというアルゴリズムの深層学習モデルを用いて、風速から乱流輸送をある程度の精度で診断可能であることがわかった。この成果はAIP Advances誌に受理された。 気象研究所の小型風洞を用いて安定成層の実験を実施し、気流の安定度が増すと床面の冪則の指数が変化し、その変化率は床面の粗度状態に依存しないことが明らかになった。地表面近傍の風速を考える上で有意な知見と期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
豪雨をもたらす線状降水帯や気象モデルのパラメタリゼーションの改善につながる研究成果について、2篇の論文発表を行っている。2019年台風17号に伴い発生した延岡竜巻の計算結果の解析を行ったところ、メソサイクロンの世代交代や強度がピークになる直前の構造変化など興味深い結果が得られており、来年度に成果発表する。 これまで「京」コンピュータを利用して行ってきた台風全域LESについて、高解像度でさらに長期間の発達初期から計算を行うため、「富岳」を利用し実行可能な環境を整備した。 気象研究所の風洞実験において、熱線流速計により、さらに周波数の高い風洞実験データが測定されており、今後活用できる。
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今後の研究の推進方策 |
線状降水帯の理想実験は、スピンアップ後、降水系の上流側で積乱雲が発達し続ける定常状態に達するため、長時間の計算結果の解析により、積乱雲の発達に関してアンサンブルが得られる。状態量や輸送量に関するアンサンブルが得られる。このようなアンサンブルの解析を通して定量化を行う。台風に関して、新たに実行する長期間にわたる計算結果の解析を行う。 気象研究所の大型風洞を用いて安定成層の実験を行う。中立時に成立する平均風速や風速変動分散の対数則が安定度の強まりに応じてどのように変化するか明らかにすることが目的である。また気象研究所露場において実施している超音波風速計の通年データを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により、参加予定であった学会の中止や延期があった。次年度、もし開催される場合は参加する予定である。
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