モデルシミュレーションを用いて,北極海表層における酸性化に対して,河川由来化学成分(栄養塩,炭素,アルカリ度)が及ぼす影響を調べた。その結果,河川水が増えた海域では酸性化の速度が緩和されることが分かった。河川水由来物質は,従来の酸性化予測モデルでは無視されることが多いが,温暖化に伴って物質流入量が増えるとも予想されている。本研究の結果は,将来の酸性化予測において,河川由来物質がを考慮することが重要であることを示した。この結果は論文にまとめ,現在査読後の改訂中である。 また,過去18年間の観測データから,炭酸カルシウム未飽和水の分布を調べた結果,表層でも亜表層でも厚みを増しているが,両者の間の過飽和水の厚さはあまり変化していないことが分かった。これは,亜表層の未飽和水が,海洋循環強化によってより深いほうにシフトしたためである。これにより,生物が殻を作りやすい過飽和水の厚さが保たれているという,あらたな事実を発見した。この結果は,学会発表したほか,論文にまとめ,間もなく投稿する予定である。
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