研究課題/領域番号 |
19K03975
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
西 憲敬 福岡大学, 理学部, 教授 (00222183)
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研究分担者 |
濱田 篤 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (30550008)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 積雲クラスター |
研究実績の概要 |
新しい再解析データセットERA5は、これまでのデータセットと異なり、現実の雲帯分割現象を良く表現していることがわかった。2020年後半について、全球赤外画像データの中部太平洋域を目視で調べ、典型的な形状の分割事例を探し、ERA5と合わせて解析を行った。1) 西に長い雲帯の形成は現象発生の必要条件である。事例が多数検出された時期の共通点を調べたところ、ITCZ付近の高水蒸気域の緯度方向の広がりが小さいことがわかった。2) 雲帯の分割をもたらす要因について調べた。昨年度行った雲解像モデルNICAM実験の結果解析などでは慣性不安定の必要条件となる負の絶対渦度が雲帯周辺に広く認められていたが、今回解析した事例では、あまりみとめられなかった。一方、雲の日変化がきっかけではないかと思わせる結果が得られた。分割発生前に非常に背の高い積乱雲で雲帯が満たされる時間を調べたところ、ほとんどの事例で朝の局所時06時頃であった。この積乱雲が衰弱するタイミングで分割が発生することが期待される。海洋上の雲の日変化をもたらす要因はいくつも知られ、議論は収束していないが、いずれかの理由による日変化が東西に長い雲帯の分割に寄与している可能性は大きいように思われた。3) 雲帯の分割が進していく過程をさまざまなパラメタで解析した。これまでの赤外画像の観察だけでは南北発散流による移流によって雲が北東および南東に流れているようにみえた。しかし、ERA5の南北鉛直断面での各物理量の変化からは、かなり強い内部重力波の存在が認められ、その存在場所が南北および上方に移っていくように見えた。内部重力波の位相伝播が雲帯の南北への移動に関与している可能性が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は順調であったが、2020年度は感染症対策で学事が肥大化して研究が圧迫され、また共同研究者および研究協力者との連絡のための出張も全部キャンセルとなった。そのため、東京大学のスーパーコンピュータ上で、全球雲解像モデルNICAMを用いて行う予定だった数値実験がほぼできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、感染症の影響も前年度ほど大きくならず、また遠隔での共同研究のほうも確立されたため、研究は順調に進行できる見込みである。データ解析と数値実験を並行して進めることによって、現象を引き起こすメカニズムについてまとまった所見が得られるように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に感染症の影響による学事の肥大および出張の抑制が発生したため、数値実験データの解析に用いる計算機を購入しての研究がほぼできなくなったため、計算機の購入を見送った。また研究発表回数が予想を下回った。次年度には計算機(高性能PC)を購入して、遅れていた解析に着手するとともに、研究発表を充実させる予定である。
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