研究課題/領域番号 |
19K03975
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
西 憲敬 福岡大学, 理学部, 教授 (00222183)
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研究分担者 |
濱田 篤 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (30550008)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 積雲クラスター |
研究実績の概要 |
東京大学のスーパーコンピュータOAK-Forestおよび、Wisteria上において、雲大規模分割現象の再現実験を行った。実験には、全球雲解像モデルNICAMを用いた。当初、OAK-Forestを用いた空間解像度約56kmでの実験では、現象の再現はできなかったため、NICAMのバージョンを16から19に変えて、その実験に適したシステムWisteriaに移行することによって、空間解像度7kmの実験を行った。その結果、2020年12月、2021年1月、10月の3つの中部太平洋における雲帯の分割を再現することに成功した。初期時刻から現象発生まではおおむね3日間であった。2021年10月の現象については、発生時刻が約半日現実のものとは異なったが、それを除くと発生場所・時刻ともほぼ現実の事例どおりであったことから、初期時刻にはすでに分割現象発生のキーとなる場が含まれていたと考えられる。現象内の各物理量の特徴について、再解析データであるERA5と比較を行った。分割発生前の東西に細い帯が形成されるにあたり、南北への広がりが平年よりも狭い下層水蒸気の東西方向の帯がどちらにも検出されており、このことが雲帯の形成と関係がある可能性が示唆される。雲帯の分割を起こす理由として、ERA5の解析値では水平波長200-500kmの鉛直伝播性内部重力波が明瞭に検出されたが、NICAM出力ではそれらはあまり検出されなかった。内部重力波が欠如した状態でも分割が再現されていることから、今のところ内部重力波の重要性を否定するような結果だとみられる。なお、雲降水過程についての知見を求めるために、研究協力者として佐藤令於奈(大分地方気象台)および野口萌(鹿児島地方気象台)に協力を仰いだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度には新型コロナのために研究進行が大きく遅れた。しかし、本年度は研究は単年度としては順調に行うことができた。しかし、昨年度の遅れを完全に取り戻すことはできなかったので、研究全体としてみればやや遅れていると認めざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は延長期間にあたる。本年度再現に成功した数値モデルNICAMの再現実験をもとにした各種感度実験を行うことによって、現象発生の機構に迫っていきたい。年度後半には、ERA5の解析結果と合わせて、論文および国際学会発表の形でまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に新型コロナによる影響で、2019-20年度に、研究分担者との共同研究や情報収集が滞ったため、次年度への延長を行った。次年度の使用計画は、ほぼ当初計画の3年め(2021年度)のものと同じである。
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