研究課題/領域番号 |
19K03976
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
丹羽 洋介 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (70588318)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 逆解析 / 温室効果ガス / 二酸化炭素 / 最適化 |
研究実績の概要 |
炭素循環には未解明なメカニズムが多く存在し、温暖化予測に大きな不確定性が生じている。本研究では、大気の二酸化炭素(CO2)濃度観測データから、大気と陸域・海洋間の CO2フラックスを定量的に推定する逆解析という手法を用いることにより、炭素循環メカニズムの理解深化を目指している。CO2などの長寿命の温室効果ガスの逆解析は、長期の解析期間を要することが一つの特徴である。この解析期間には様々な時間スケールのフラックス変動が存在するが、それぞれのスケールを同時に最適に推定する手法はまだ確立されていない。そこで本研究では、短期(日変化)から長期(経年変動)のスケールまで幅広くカバーすることのできるマルチスケール最適化手法の開発を目的としている。
本年度は、1次元のボックスモデルとその逆解析システムを作成し、最適化の効率性について、時間スケール毎に評価を行なった。その結果、経年変動などの長期成分が最適化されやすく、一方で、季節変動は最適化されにくいことがわかった。一方で、4次元変分法をベースとした解析誤差共分散行列の推定手法を開発した。この手法により、今まで推定が困難であった非対角成分までも高精度に推定することに成功した。さらに、得られた解析誤差共分散行列から、最適化における主要なフラックス成分の抽出が可能であるかどうか、調査を開始した。また、CO2の逆解析において、逆解析システムに新たにスケーリング・ファクターを解析対象とする機能を追加し、2015年のインドネシア森林火災の事例解析に適用した。これにより、日変化を含むフラックス変動を適切に考慮して最適化することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、解析誤差共分散行列の推定手法開発の成果をまとめるための時間が、想定よりもかかってしまったため、新たな最適化手法に向けての開発や、逆解析システムへの実装に着手できなかった。一方で、1次元の簡易モデルを開発したことで、新手法の開発・実装へ向けた検証作業の効率性が向上し、今後、研究の進展が加速されることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1次元のボックスモデルを活用して、時間方向のスケールに着目しながら最適化手法の開発を進める。特に、初期推定値の修正手法を検討する。2年目の後半からは、実際の解析に用いる3次元モデルを使った解析に着手し、3年目で実問題に適用して成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行った国内外の出張において、当初の見積もりよりも安価に航空券が取得できたため、次年度使用額が発生した。次年度では、新型コロナウィルスの影響により、国内外の出張が大幅に減る可能性があるため、論文による成果発表時には、より成果のvisibilityを向上させるために、当初計上していた旅費の予算をオープンアクセス料支払いなどに充てる。
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