研究課題
炭素循環には未解明なメカニズムが多く存在し、温暖化予測に大きな不確定性が生じている。本研究では、大気の二酸化炭素(CO2)濃度観測データから、大気と陸域・海洋間の CO2フラックスを定量的に推定する逆解析という手法を用いることにより、炭素循環メカニズムの理解深化を目指している。CO2などの長寿命の温室効果ガスの逆解析は、長期の解析期間を要することが一つの特徴である。この解析期間には様々な時間スケールのフラックス変動が存在するが、それぞれのスケールを同時に最適に推定する手法はまだ確立されていない。そこで本研究では、短期(数時間)から長期(数年)のスケールまで幅広くカバーすることのできるマルチスケール最適化手法の開発を目的としている。本年度は格子変換に関する手法開発や、疑似観測実験による逆解析の信頼性評価について、論文として成果をとりまとめた。その論文を国際誌Progress in Earth and Planetary Scienceに投稿し、受理された。この論文は、本課題を通して開発を進めてきた逆解析システムNISMON-CO2の記述論文としても機能し、今後、NISMON-CO2やその逆解析で得られたデータの利用促進が期待される。開発されたNISMON-CO2は、陸域植生上の日変化を適切に表現しつつ、数十年にわたる長期の逆解析を行うことが可能となっているほか、海洋と陸域でターゲットとするフラックスの時間スケールが異なる場合でも、それぞれ適切なスケールで同時に最適化が可能となっており、当初の目的を達成しているシステムとなっている。このNISMON-CO2を用いることで観測に基づくCO2収支の高度な情報提供が可能となるほか、今後はメタンやハロカーボンなどCO2以外の重要な温室効果ガスにも適用していくことで、包括的な温室効果ガスの収支・動態解明へと繋げることができると期待される。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Progress in Earth and Planetary Science
巻: 9 ページ: 42
10.1186/s40645-022-00502-6