研究実績の概要 |
本研究では、海洋における微量金属の循環において沈降粒子が果たす役割に注目し、北太平洋の東経175度ラインに沿って実施されたセジメントトラップ試料及び直下で採取された表層堆積物の元素分析を行い、微量金属フラックスとその変動要因を明らかにする。さらに、特に生物の必須微量金属として重要な鉄の同位体分析を行って、海洋の物質鉛直輸送に伴う鉄の生物地球化学的プロセスを解明することを目的とする。今年度はセジメントトラップ試料のバルク元素分析を行い、Site 6(30°N, 亜熱帯海域)、Site 7(37°N, 遷移帯海域)、Site 8(46°N, 亜寒帯海域)における沈降粒子構成成分と元素組成の関係を明らかにした。各海域における主要成分は、亜熱帯海域では炭酸塩(~60%)、遷移帯では炭酸塩(~40%)と石質(~30%)、亜寒帯域では生物源オパール(~70%)であった。沈降粒子における元素フラックスは、4つの主要なプロセス、すなわち石質(Al, Ti, Fe)、炭酸塩(Mg, Ca, Sr)、生物による取り込み(Ni, Zn, Cd, Cd)、スキャベンジング(V, Mn, Co, Cu, Ba)によって支配されていた。また、上部大陸地殻の元素組成との比較により、80%以上のNi, Cu, Zn, Cd, Ba, Pb、ならびに相当量のV, Mn, Fe, Coが、スキャベンジング(+生物による取り込み)によって、海洋から除去されていることを示した。
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