研究課題/領域番号 |
19K03980
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
黒田 剛史 東北大学, 理学研究科, 助教 (40613394)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火星 / 大気大循環モデル / 大気物質循環 / 国際研究者交流・ドイツ |
研究実績の概要 |
静力学火星大気大循環モデル(DRAMATIC MGCM)のT106(水平分解能約1.1°:67km相当)計算を用いた研究では、前年度より取り掛かっていた2編の論文が発表された。1つは地上望遠鏡観測から検出された高度約80kmの東風風速が非常に強くなっていることについて、モデル結果を用いてその考えられるメカニズムの議論した論文(Miyamoto et al., 2021, Geophysical Research Letters)、もう1つは火星地表面に存在するRSL(Recurring Slope Lineare)からの水蒸気放出がリモートセンシングにより観測可能かどうかについて、モデル計算で得られた3次元濃度分布及びその広がり方を基に議論を行った論文(Kurokawa et al., 2022, Icarus)である。またこれらに引き続いて、DRAMATIC MGCMの水循環過程に地表のレゴリスによる水の吸着効果を導入した計算に取り掛かっている。 学会発表についてはCOVID-19の影響で満足に行うことができなかったが、上記Kurokawa et al.に基づく内容について、研究代表者による成果発表を日本気象学会で行った。また非静力学モデルの活用についても、正20面体格子モデルSCALE-GMを火星化したMGCMの開発を進め、水平分解能15kmで地形を導入した計算を行えるようになった(樫村他、研究代表者を共著者として日本惑星科学会・日本気象学会で発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.1°分解能DRAMATIC MGCM計算による成果創出と論文化、非静力学モデルを用いたさらなる高分解能MGCMの開発とも順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
DRAMATIC MGCMに実装された水循環とHDO/H2O同位体分別スキームを発展させ、レゴリスによる水吸着に加えて地下水の地表への放出、またそれらに伴うHDO/H2O同位体分別も計算に採り入れ、地上望遠鏡やExoMars Trace Gas Orbiterによる水のD/H比分布観測と合わせた大気・表層間の水のやり取りと地下水の年代の検証を行う。これは火星水環境の歴史の理解のみならず、将来の有人探査等に資する地下水源の把握とそのための探査計画立案にもつながる。 合わせて1.1°分解能DRAMATIC MGCMを用いて、現在まで15年以上に渡り火星大気の定常観測を続けているMars Climate Sounder観測データを用いたデータ同化シミュレーションを実行し、世界でも前例のない水平高分解能客観解析データを作成する。この一部は地球シミュレータ利用課題「AFESを用いた金星・火星大気の高解像度大循環シミュレーション」に研究代表者が参画し、データ同化研究に実績のある課題メンバーと連携して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度から引き続いてCOVID-19の影響で国内・国際学会参加及び打ち合わせのための出張が制限されているため、研究遂行加速のためのワークステーションを購入してもなお227,843円の次年度使用額が生じた。今後成果発表をより精力的に行うべく、国際学会参加のための旅費及び論文投稿料に充てる。
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