研究課題/領域番号 |
19K03984
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
越後 拓也 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (30614036)
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研究分担者 |
星出 隆志 秋田大学, 国際資源学研究科, 助教 (20647565)
荒岡 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (60738318)
渡辺 寧 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (90358383)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ブッシュフェルト岩体 / ペグマタイト / 輝岩 / 斜長岩 / 結晶粒径分布 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、南アフリカ共和国のブッシュフェルト複合岩体北部に位置するウォーターバーグPGE(白金族元素 Platinum Group Elements の略称)鉱床の形成モデルを構築するため、(1) 熱水変質鉱物の詳細な観察と分析、(2) 鉱石と母岩の微量元素およびSr-Nd同位体比測定、(3) PGE鉱化帯の岩石組織の定量的な解析を行うことを計画していた。今年度は特に(3)の分析・解析に取り組み、以下のような成果を得た。 研究試料として用いたのはブッシュフェルト岩体東縁に産するペグマタイト質輝岩および斑状斜長岩である。露頭での観察では、斑状斜長岩にペグマタイト質輝岩が貫入しているような産状を示し、斑状斜長岩が超塩基性マグマによる熱変成を受けたことを示唆する。これらの岩石試料の薄片を作成し、鉱物種の同定と結晶粒径分布(crystal size distribution: CSD)の解析を行った。 ペグマタイト質輝岩を構成する鉱物は単斜輝石が卓越し、CSDは極大値を持たない線形の分布を示した。このことは、本試料がアニーリングやオストワルト熟成の影響を受けていないことを示唆する。一方、斑状斜長岩は主に斜長石と単斜輝石からなり、CSDは微小結晶が少ない、上に凸のカーブを示した。このことは、斑状斜長岩が高温下でアニーリングもしくはオストワルト熟成を経験し、微小な結晶が消失して粗粒結晶が発達したことを示唆する。このように、露頭での観察とCSD解析結果は良い一致を示し、これらの岩石の生成過程を一部明らかにすることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はブッシュフェルト岩体のPGE鉱化帯に特徴的な岩石組織である「ペグマタイト質輝岩 (pegmatoidal pyroxenite)」と「斑状斜長岩(mottled / spotted anorthosite)」の定量的な解析手法を確立することが出来た。岩石組織を定量的に解析する手法として「結晶粒径分布(crystal size distribution: CSD)」解析を採用したが、この手法をペグマタイト質および斑状組織を持つ超塩基性深成岩体に適用した前例はなく、新しい試みであった。特にペグマタイト質輝岩は粒径の変化幅が大きく、粒径20mmを超えるような単斜輝石粒子も含まれていたため、統計的に優位なサンプル数(3000粒子以上)を得るため、同一岩石試料から多くの薄片を作成する必要があり、困難を伴った。しかし、多くの薄片を高分解能スキャナとペンタブレットで処理することにより、十分な粒子数からデータを得ることが出来た。この手法を斑状斜長岩にも応用し、それぞれのCSD解析結果を得ることができた。このように、岩石組織の定量解析に関する新規手法を確立することができたため、本年はおおむね順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで述べたとおり、本年度はペグマタイト質輝岩および斑状斜長岩の岩石組織に関する研究を行った。特にCSD解析をこれらの岩石に応用することで生成過程の一部を明らかにすることは出来たが、全岩化学組成および鉱物化学組成の分析によって岩石形成の全容を明らかにする必要がある。また、岩石組織の解析手法も2次元的な薄片観察だけでなく、内部も含めた3次元的な構造を知るためにX線CTを利用する予定である。これらの分析結果に基づいて岩石組織の形成過程を明らかにし、PGE鉱化作用との関連を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍のため、国内・海外出張のほとんどがキャンセルになった。そのため、旅費として計上していた予算を計画通り使用することができず、実験用品やデータベース購入費に充てたが、全ての予算を消化することはできなかったため、次年度使用額が生じた。次年度も海外出張は難しいと思われるが、国内出張は部分的に可能になると思われるので、研究成果の発表や出張先での化学分析を行う計画である。
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